パリでのテロとシリア難民受け入れのおかげで、共和党候補指名争いでやや落ち目だったトランプが盛り返した。「メキシコとの間に塀を建て巡らせ」と彼が主張したように、国境への過敏さに米国は取りつかれている。国境をなくした欧州は今やテロの本場ではないか!
これは民主党候補指名に最も近いヒラリー・クリントンにとっては有利な展開で、彼女の女傑ぶりはほかの分野での成果とともに、仮にトランプが指名されても本選挙で撃破するのに十分だろう。共和党予備選でトランプを支持する30%の票は、本選挙に還元するとわずか7.2%で女性64%、非白人74%が彼を忌避している。
熱狂的なトランプ支持層は高卒白人(一般に年収4万ドル以下)だ。2015年のノーベル経済学賞受賞者アンガス・ディートンによれば、この15年間で壮年期の高卒白人の死亡率は自殺の増加などにより10万人当たり134人増えて415人。他方、アフリカ系581人、ヒスパニック系は262人だが学卒白人とともに自殺は減少中だ。社会的に追い詰められている層が、米国の高邁な理念を振り捨て、利己的な本音だけに絞り込んだトランプの主張に飛びついたと見ることができる。
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