戦後70年の年の最後の時評なので、今年を振り返ってみたい。今年は新安全保障法制の成立という平和国家路線からの大きな転換が起こった。政治学の世界でも、松下圭一、篠原一など、1920年代生まれで青年時代に戦争を経験し、それを土台に政治学研究を深めていった学者が相次いで亡くなった。戦後政治学の終わりを痛感させられる。これらの学者は、敗戦後占領軍によって与えられた制度としての民主主義を、理念や精神として、あるいは実践や行動として日本に定着させることを目指し、長年思索と発言を続けた。
特に、両氏に共通するのは、政治を論じるときの時間軸の長さと、突き抜けた楽観主義である。
松下は50年前から、情報公開と参加に基づく分権と自治を主張し続けた。沖縄県の反対にもかかわらず辺野古の新基地建設を強行する中央政府の姿勢を見れば、地方分権など夢のまた夢と感じるかもしれない。しかし、県があそこまで戦い、裁判を通して国の非違をただせるということは、20年前までは考えられない事態であり、やはり分権は進んでいるということもできる。
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