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妊娠後に6割が退職 マタハラ横行の悲劇 女性活躍推進法は機能する?

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(イラスト:岡田航也)

「すみません。子どもができたのでご相談が……」 派遣社員の田川恵美さん(仮名、34)は、恐る恐る職場の上司に切り出した。都内の金融機関で営業事務員として働き、正社員登用を目指して仕事に励んだ。一方で「35歳を過ぎると妊娠しづらくなるというし、出産するなら早いうちに」と考えていたため、妊娠はうれしかった。

つわりがひどく、通勤時はラッシュで吐き気が抑えられない。せめてつわりが治まるまでは時差出勤し、残業も減らしてほしいと申し出ようとしていた。

妊娠中の通勤緩和や業務負担軽減などの措置は、男女雇用機会均等法の母性保護規定で認められているが、終電帰りが当たり前という中で上司の反応は冷たかった。

「みんな忙しい。残業して一人前。なぜ派遣の間に子どもを作った。妊婦だからといって特別扱いできない。嫌ならほかで働いたほうがいい」 

再び、すみませんと謝り、黙るしかなかった。

数日後、派遣元の担当者から連絡を受けた。それまで3カ月ごとの契約更新が2年も続き、時給も上がっていたが、「次の契約更新はなくなりました」と雇い止めに遭った。その後、ほかの派遣先の紹介がないまま出産に至った。田川さんは「これでは、子どもを産むのが悪いことのようだ」と、憤りを隠せない。

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