甘くない現実と代償 日経がFT買収でつかむ
会長主導で結実したM&A。1600億円を投じて得られるものとは何か。
東京・大手町にある日本経済新聞本社ビル。皇居を見下ろす役員フロアは今頃、かつてない高揚感に包まれているだろう。1600億円で買収した英経済紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は、自分たちが長年お手本として追いかけてきた、あこがれのメディアだからだ。
だがいつまでも浮かれていられない。高額報酬の著名コラムニストをつなぎ留め、とてつもなく高いのれん代を償却し、加速する読者の紙離れに対応する。引き換えに背負った課題の重さに気づくのに、さほど時間はかからない。
大型M&Aのニュースは、とかく買う側の視点で語られがちだが、注目すべきは売る側の戦略である。敵対的TOB(株式公開買い付け)でなければ、売る側にも「売りたい事情」があったはず。要は「いらない」から売るのだ。米欧には賢い売り手が多く、それを高値でつかむのが日本企業、という構図である。
テレ東上場時の資金
FTの紙の発行部数は、リーマンショック前の2008年、世界で45万部だった。本拠の英国で12万部、米国で13万部、その他で20万部の内訳である。それが現状は23万部という凋落ぶりだ。この間、電子版の有料会員が10万人から50万人に増えているが、購読料や広告料の単価は紙媒体を大幅に下回る。
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