AT&Tがワーナー買収、メディア通信連合に 携帯電話会社による垂直統合は奏功するか
10月22日(米東部時間)、米通信大手AT&Tが、米メディア大手タイム・ワーナーを約854億ドル(8兆9070億円)で買収すると発表した。
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AT&Tのランダル・スティーブンソンCEOは24日、決算報告を兼ねた電話会見で、2017年中にも契約が正式に成立する見込みだと説明。「今はメディアと通信が統合されつつある時代。次なるイノベーションの波は、プレミアムコンテンツと配信の“垂直統合”だ」と、狙いを語った。
垂直統合とは、コンテンツ制作から、携帯電話やパソコンへの配信までを自社内で賄うことを意味する。業界では13年にケーブルテレビ最大手コムキャストとNBCユニバーサルが合併した事がある。
今回はそれ以来の大型合併だけに、業界やメディアは色めき立った。ミシガン大学経営大学院のM・S・クリシュナン教授によれば、合併は消費者が好きな時に好きなものを見るというカスタマイズの傾向を反映したもので、「今後さらに強まる」という。
1億人超の加入者を抱えるAT&Tの狙いは、コンテンツ制作・配信側と広告主を囲い込む一方で、加入者に対していつでも、どこでも高品質なビデオエンターテインメントを楽しめる環境を提供することにある。
買収で合意したタイム・ワーナーは、世界最大手の映画制作配給会社ワーナー・ブラザースほか、ニュース専門局CNN、人気ケーブルテレビ局HBO、TNTを擁するメディアコングロマリットだ。
デジタルマーケティング会社、マーケティング・ゼン・グループのCEOでメディア業界に詳しいシャーマ・ハイダー氏は、合併の背景を「ミレニアル世代が、AT&Tから契約の自由度が高い競合通信会社に流れている」と指摘する。さらに動画配信のネットフリックスやHuluといったサービスが急速に台頭している。AT&Tは、買収を機にさまざまなサービス提供を行い、対抗する狙いがありそうだ。
見えないシナジー
ただ、統合効果は未知数だ。金融サービス会社、BTIGリサーチでメディアアナリストとして働くリチャード・グリーンフィールド氏は言う。「コムキャストの例を見ても、大きなシナジーが生まれているようには見えない。垂直統合がメディア業界に大きな恩恵をもたらさないことは、歴史が証明している」。
AT&TのスティーブンソンCEO自身もシェア拡大やコスト削減という通常の合併ではなく「(既存ビジネスを補完する)ボルトオン買収に近い」と言う。
コムキャストの買収では米司法省の調査に1年近い時間がかかった。今回も認可という大きなハードルが立ちはだかっている。また、共和党大統領候補のドナルド・トランプ氏や、民主党副大統領候補のティム・ケイン上院議員がそろって買収に反対を表明していることも懸念材料だ。
はたしてAT&Tとタイム・ワーナーは歴史を塗り替え、新たなメディア帝国を誕生させることができるか。






















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