中国主導の新国際金融機関について、日本での関心は先行きの不透明さに偏重している。だが、中国の実力を過小評価し、国際環境の変化を見落としている心配はないか。
今年3月中旬に英国が参加を表明して以来、中国が主導しているアジアインフラ投資銀行(AIIB)への参加をめぐる国内の議論がかまびすしい。日本政府は米国とともに、AIIBのガバナンスの透明性や、融資供与国の政府との中立性の確保などに懸念を示し、参加に慎重な姿勢を見せてきた。だが、3月末までに先進国も含め50以上の国と地域が名乗りを上げたのを受け、米国と連携しながら中国に組織運営の透明化を求めつつ、参加を模索するという柔軟な姿勢に転じている。
それでも、筆者から見て懸念すべきことが二つある。第一に、AIIBの有力な融資先と考えられている「一帯一路(シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード)」構想に関して、日本政府が独自に情報を収集し、判断を下すという姿勢がほとんど見られなかったこと、第二に、中国政府の経済外交の手腕に対する明らかな軽視の姿勢が見られたことである。
このうち「一帯一路」構想については、昨年秋のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議において習近平国家主席により提起され、3月28日に詳細な戦略計画が明らかにされた。計画の中で「各国間の政策協調」「インフラ整備」「貿易の活発化」「資金の融通」「民間の相互理解」という五つの基本となる精神も明示された。
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