イタリアのほうが病状は深刻だ
エリック・シャネイ
アクサグループ チーフエコノミスト
「欧州の病人」はイタリアだろう。フランスが最優先で取り組まなければならないのは労働市場の改革。イタリアも同様だが、問題はそれだけでない。金融システムにも不安を抱えている。
イタリアは司法の効率性も高めなくてはならない。司法のプロセスに長々と時間がかかる。病状はより深刻だ。
ユーロ安や原油価格下落はフランス経済の回復に寄与し、政府による企業の負担軽減策も収益向上をもたらした。市場原理導入に向けた改革はさほどの景気刺激につながっていないが、正しい方向ではある。
北欧の労働市場改革が手本に
ただ、改革なしでは高成長も見込めないだろう。労働市場改革は喫緊の課題だ。公務員や大企業で働く労働者が終身雇用契約で守られているのに対し、学歴が高くなく低賃金で働く人たちはまったく保護されず、失業者が構造的に増えてしまう。不公平かつ非効率的な仕組みであり、大きな社会的緊張をもたらしている。
改革でお手本にすべきは、北欧のデンマークやスウェーデンだ。共に1980年代からメスを入れ始めた。両国の「フレキシキュリティ」は興味深いモデルだ。これは「フレキシビリティ(柔軟性)」と「セキュリティ(安全性)」を合わせた造語。フレキシビリティは企業による解雇を柔軟にするという意味だ。
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