かたおか・ごうし●三菱UFJリサーチ&コンサルティング経済・社会政策部主任研究員。専門は応用計量経済学、マクロ経済学。1972年愛知県生まれ。慶応義塾大学大学院商学研究科修士課程修了。著書に『日本の「失われた20年」』『円のゆくえを問いなおす』など。
欠かせない「工程表」の明確化への取り組み
評者 上智大学経済学部准教授 中里 透
2014年の秋口まで、景気回復の遅れは天候不順によるものとされていた。消費増税に伴う実質所得の減少も「天候不順」に含めて考えるということであれば、このような説明も可能なのかもしれないが、家計調査や百貨店売上高などのデータを冷静にながめてみれば、景気回復の遅れの主因を天候不順に求めるのは無理があるということになるだろう。本書はこのような「誤解や神話をすべて取り除いたうえで、できるだけまっさらな視点で」日本経済の現状と課題を論じた興味深い一冊だ。
アベノミクスのこれまでの2年間を振り返ってみると、第2次安倍内閣の発足から13年の秋口までは、生産と消費が順調に拡大し、雇用環境にも大幅な改善がみられた。このような好循環が実現した背景には、「大胆な」金融緩和を起点とする円安・株高が資産効果を通じて家計消費を押し上げたということがあると著者は言う。
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