生産性改善を阻害する 弱者保護視点の支援策
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
2013年10~12月以降、日本経済がプラス成長だったのは消費増税前の駆け込み需要が発生した14年1~3月だけで、それ以外はマイナス成長だ。消費増税で景気が失速したと考える人が少なくないが、13年末から日本経済は成長していない。実は13年末に日本経済は完全雇用に達し、ゼロ近傍まで低下した潜在成長率を大きく超える成長が困難になっていた。今や追加財政や金融緩和は弊害が強まるばかりで、成長率を高めるには成長戦略で潜在成長率そのものを改善させるしかない。
それでは、成長戦略は企業の実態に即したものとなっているか。わが国企業の実に99.7%は中小企業で、大企業はわずか0.3%に過ぎない。圧倒的多数を占める中小企業の生産性を改善しなければ、潜在成長率の向上はままならない。しかし、中小企業は実態把握すら十分とは言えない。経済学の世界でも、中小企業の定量分析は極めて限られる。本書は、中小企業の日本経済への寄与度を定量的かつ包括的に分析した力作だ。
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