ひしひしと伝わってくる国際的営為参加の必要性
評者 福山大学経済学部教授 中沢孝夫
外交を中心として、ここ15年間の日本政治の動向を、米国はじめ諸国との関係や、歴史を振り返りながらその時々の考えを述べた本である。こうして一冊になることによって、著者の、状況を読み解き、問題の所在を指摘し、方向を示す能力の卓抜さをあらためて感じた。国益とは優れて安全保障と経済的利益(あるいは経済活動の自由)を守ることだが、本書を読んで再認識したのは、日本の国益は米国と中国との関係を抜きに成り立たないということである。
著者は繰り返し「日米同盟プラス日中協商」の必要性・不可欠性を語る。同時に第1次大戦、第2次大戦のエポックを振り返りながら、「無法者」に譲ってはならない瞬間があることを実証する。「相手が弱い、闘いを避けている」と無法者が理解すると、より大きな攻撃を仕掛けるのは歴史が証明しているとして、軍国主義の日本、ヒトラーのドイツを例示する。そして著者は冷戦期の米国などを振り返りながら、「実際の平和は、優位に立った側が現状打破を挑まず、自制的に振る舞う場合に守られる」と指摘する。
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