Atif Mian●米プリンストン大学経済学・公共問題教授。米マサチューセッツ工科大学(MIT)で経済学博士号を取得。米カリフォルニア大学バークリー校などを経る。Amir Sufi米シカゴ大学経営大学院(ブース・スクール)教授。全米経済研究所(NBER)のリサーチアソシエートも務める。米MITで経済学博士号を取得。
深刻な経済危機の前には家計債務の急上昇がある
評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎
サブプライム住宅バブル崩壊による2008年の不況が、なぜあれほど深刻化したのか。
通説は、バブル崩壊による金融機関の自己資本の毀損で、金融システムが機能不全になったというものだ。実際の政策でも、金融機関の厳格な資産査定を行い、十分な引当金を積ませ、自己資本を充実させるために公的資金注入が強く求められた。
本書は、金融システムの機能不全の影響を否定しないものの、不況深刻化の主因は、家計が過大な債務を抱えたことだったと論じる。中低所得者を中心に家計の負債は00年から06年の間に2倍に膨張したが、担保だった住宅の価格が06年に下落すると、消費が急激に落ち込み、雇用も大きく悪化した。リーマンショック以前に景気は相当悪化していたのであり、金融危機は原因というより、むしろ結果だった。通説の立場を取っていた評者は「目から鱗」の思いだ。
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