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国際環境、国内政治の変化の相互作用に注目 地政学的な発想・理解に有益な得難い一冊

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Pascal Boniface●パリの国際関係戦略研究所長。パリ第8大学欧州研究所で教鞭を執る。地政学分野で著名なスペシャリスト。意見発信に積極的で、編著書は50冊を超える。
Hubert Vedrine●1981年から95年までフランス大統領府(ミッテラン大統領)で外交顧問、報道官、事務総長を歴任し、97年から2002年までシラク大統領の下で外相。

日本の国際関係論議に 広い視野から知的刺激

評者 東京外国語大学大学院教授 渡邊啓貴

本書は5年前に翻訳出版された同名書の増補改訂版である。著者の一人、ボニファス氏はフランスで五指に入る外交・安全保障系シンクタンク、国際関係戦略研究所(IRIS)所長であり、共著者のヴェドリーヌ氏はミッテラン、シラク両大統領時代に外交顧問を経て、外相を務めた外交経世家として著名な人物である。 

最近邦語でも地政学に関する書籍が多く出版されているが、その大半はパワーポリティクスによる勢力圏争いを論じたものにとどまる。

しかし地政学にパワーポリティクスが付き物だとしても、それだけではない。本書は地政学的発想を広範な射程でとらえ、基本的な指標やパラダイムを整理し、今日の地政学的アプローチに不可欠な基本データ、そして各地域圏から見たさまざまな世界観について論じている。地政学に特に興味のない読者にとっても、国際社会の構造的な理解において有益な得がたい一冊である。

第1部では近代以後の西欧中心の史観を読者に提供する。そして第2部ではグローバル化した今日の国際社会についていくつかの見方を比較する。「国際共同体」という道徳的・倫理的世界観、「文明の衝突」という文化的アプローチ、日本ではあえて触れられない傾向があるが、「一極世界」と「多極世界」という対立軸、そして「混沌とした世界」という無秩序世界観の紹介である。

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