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原発をめぐる独仏それぞれの選択を冷静に描く 書評:物価の第一人者が挑む慢性デフレの解明

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慢性デフレ 真因の解明 (シリーズ現代経済研究)
慢性デフレ 真因の解明 (シリーズ現代経済研究)(日本経済新聞出版/240ページ)書影をクリックするとAmazonのサイトにジャンプします。
わたなべ・つとむ●東京大学大学院経済学研究科教授。東大発ベンチャー・ナウキャスト創業者・技術顧問。1959年生まれ。東大経済学部卒業。日本銀行入行。米ハーバード大学でPh.D.取得後、一橋大学経済研究所教授などを経て現職。著書に『市場の予想と経済政策の有効性』など。

主たる原因といえない賃金デフレ、グローバル化

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

日本のデフレが歴史的に特異なのは、それが20年もの長期に及ぶ一方で、平均マイナス0.3%と極めてマイルドなことだ。失業率が大幅に悪化した際も物価下落は加速せず、デフレスパイラルは回避された。つまりフィリップスカーブが水平化し、それは失業率が大幅に改善した現在も物価上昇が遅れていることに対応する。物価が思ったほど下がらなかったから、物価上昇も限られているのだ。

本書は物価研究の第一人者が慢性デフレの真因を解明したものだ。なぜ日本銀行の2%インフレ目標の達成が容易ではないのか、その理由が見えてくる。

「黒田緩和」による円安誘導で一時インフレ率は1.5%まで上昇したが、その間もサービスを中心に個別品目の約半数は価格が据え置かれた。こうした硬直的な価格は1990年代後半から続き、価格変更の機会費用が大きく、不況でコストが下がっても企業は値下げを見送っている。米欧ではサービスを含め年2%程度の値上げが多いが、日本では価格据え置きが常態。これが慢性デフレの背景だが、値下げすべき企業が多数残存するため、円安誘導でインフレ醸成を狙っても容易ではない。

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