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自生的な不条理克服の知恵を問う経済書 戦後民主主義の「超克」に強固な意志を示す

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見えざる手をこえて:新しい経済学のために (叢書“制度を考える")
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Kaushik Basu●世界銀行副総裁・チーフエコノミスト。1952年インド生まれ。社会的選択理論、開発経済学、ゲーム理論を専攻し、英ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス(LSE)にて博士号を取得。研究の成果を踏まえ、現在は主流派経済学の再検討をしている。

自生的な不条理克服の知恵を問う

評者 北海道大学大学院教授 橋本 努

納得しようとしまいと、この世界は主流派経済学の理論を学んだエリートたちによって動かされている。政治家からジャーナリストにいたるまで、経済学が定式化した自由市場の命題を否定することは難しく、安易に批判すればかえって知性を疑われてしまうだろう。

しかしだからこそ、経済学を批判的に吟味する作業は欠かせない。批判が持つ政治的意義もまた絶大だからである。本書は理論経済学の現代的権威が、経済学の諸命題を根本から批判しつつ、新理論の可能性を探った挑戦の書である。その姿勢は世界の貧困と不平等を克服しようとする情熱に支えられている。

アダム・スミスの「見えざる手」が20世紀の主流派経済学によって数式的に確立されると、多くの経済学者はこの公理に基づいて、自由市場と利己心の追求を無制約に正当化してきた。けれども定式化された見えざる手とは、現実の人間が予算制約外で行う選択を無視している。たとえば脅す、中傷する、隣人を愛するなどの行為をすべて含めると、見えざる手の理論は限られた範囲にしか当てはまらないことがわかるだろう。

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