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米中は「接近の法則」から「離反の法則」へ 書評:日本の医療費膨大の原因を実証分析

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再考・医療費適正化 -- 実証分析と理念に基づく政策案
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いんなみ・いちろ●慶応義塾大学総合政策学部教授。医療経済研究機構研究部長。米シカゴ大学経営大学院でPh.D.取得後、同大学助教授。米スタンフォード大学客員研究員などを経る。著書に『「社会的入院」の研究──高齢者医療最大の病理にいかに対処すべきか』など。

医師数の増加が医療費膨張の最大要因

評者 BNPパリバ証券経済調査本部長 河野龍太郎

海外の人が驚くのが、日本の公的医療保険の給付範囲の広さだ。歯科医療に加え漢方薬や針灸の施術、あん摩マッサージ指圧なども対象と知ると皆驚愕する。寛大な給付もあり、国民医療費は毎年1兆円増加し、2014年には41兆円に膨張した。

医療費抑制は、診療報酬抑制や医療保険制度改革を中心に1980年代から続けられるが、十分な効果は得られていない。

どうやって医療費膨張を抑えるか。本書は気鋭の医療経済学者が理念レベルまで掘り下げ検討したものだ。保険料や税という形で、他者の経済的自由をある程度制限し、公的制度を作っているのだから、本源的な制約が存在するという。たとえば憲法が保障する生命権、幸福追求権に基づく救命医療などは、他者の負担感とは関係なく保障すべきだが、一方、生活の質の向上を目指す医療などの保障は、財政や他者の負担感とのバランスを取る必要がある。

仮に財政危機が生じると、現制度のままでは、国費が投入される国民健康保険や協会けんぽ、後期高齢者医療制度などで、最悪の場合、給付が停止され、社会で最も弱い人たちにダメージが及ぶ。それを避けるため、優先順位をつけ疾病を六つに分類、高い給付率を維持するもの、自己負担を増やすものを予め決める。医療保障上、守るべきものは守るという考えに立ち、財政赤字削減のために削るという思考とは一線を画す。

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