三島由紀夫の来た夏 横山郁代著

三島由紀夫の来た夏 横山郁代著

三島由紀夫、自決後40年にしての「ラブレター」である。

著者は伊豆・下田の銘菓店の娘。15歳の夏、初めて三島に遭遇する。跡をつけると三島は急に振り返った。アッカンベーをしたのだ。人間、三島が本全体に溢れている。

三島は1963年から7年間、毎年夏に家族とともに下田を訪れていた。著者の店にも大好きなマドレーヌを求めてやってきた。三島は町で会う人にホテルに遊びに来なさいと気軽に声を掛けている。著者が地元の劇団で三島作の戯曲(「愛の不安」)を演じたとき、ガリ版刷りの台本に三島はアドバイスを書いた。なんと贅沢なことか。その後のぼや騒ぎで著者は台本を紛失したという。残念なことだ。

昭和の時代、地方都市の青春小説としても読める。巻を閉じると、清々しささえ感じさせる。それにしても文章は手馴れている。市井にも書き手はいると痛感する。発掘した編集者にも拍手を送りたい。

扶桑社 1470円

  

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