NTTドコモのiコンシェル、成熟市場の突破口となるか
通常のネットの履歴では、端末のIDまでしかたどれず、持ち主を特定できないため、プライバシー侵害にならない。だが、総務省総合通信基盤局消費者行政課の中村朋浩課長補佐は「位置情報と履歴を組み合わせれば、かなり個人を特定することができてしまう。プライバシーの侵害となるおそれがある」と指摘する。
同省は5月、ライフログ活用に関するガイドラインを作成した。国が線引きをすることで、この分野への企業の参入を促進する狙いだ。
「今は吸い上げる情報の種類が少なすぎる。たとえばおサイフケータイ(電子決済)の買い物履歴を活用できれば、強力な販促ツールになるのだが」。業界関係者はそう指摘する。しかし、プライバシー侵害のリスクに二の足を踏み、豊富な“資産”を有効利用できていないのがドコモの現状といえる。
飽和市場の中でカギ握るライフログビジネス
ドコモは今、国内携帯電話市場の成熟化に直面している。契約者数は飽和状態に近づき、割安な料金プランの導入で顧客当たり収入も減少が続く。通話により得られる収入は今後も減っていく傾向で、ネット利用などのデータ通信収入や各種の有料サービス・コンテンツを伸ばしていけるかが、成長のカギを握る。
だが、パソコン用のインターネットの世界に自由にアクセスできるスマートフォンでは、iモードで有料だったニュース、天気情報などが無料で閲覧できてしまう。代わりにライフログビジネスのような、膨らんできた果実を刈り取り、収入を伸ばしていきたいところだ。
「安心」「安全」を標榜するドコモにとって悩ましい問題をはらむ。が、躊躇すれば、グーグルのように機を見るに敏なネット企業がチャンスをさらってしまうだろう。ドコモのネットサービスはスマートフォン時代に生き残っていけるのか。iコンシェルはその試金石となる。
[+画面クリックで詳細チャートを表示 <会員登録(無料)が必要です>]
(桑原幸作 撮影:今井康一 =週刊東洋経済2010年11月6日号)
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら