iPadは「終わった」?それとも「これから」? 好調決算にみえるアップルの死角

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5種類ものiPadをラインナップ。アップルは、売り上げ減少を食い止めようとしている(写真:ロイター/アフロ)

アップルが10月20日に発表した2014年第4四半期(7─9月)決算は、「絶好調」といえる内容だった。売上高は12.2%増の421億2000万ドルと、月間売り上げが1兆円を超える巨大企業になりながらも、いまだに2桁成長できることを見せつけた。

この成長を牽引したのは9月中旬から世界主要国での販売を始めたiPhone 6だ。同四半期のiPhoneの販売台数は3927万2000台で前年同期比16%増。金額ベースでみても、236億ドルにもおよび、前年同期の195億ドルと比較すると21%だ。市場全体の単価下落が続く中で、単価を引き上げることができたのは単価の高い、記憶容量の大きい製品が中心に売れていることを示している。全社売り上げに占めるiPhoneの比率は、56%におよび前年同期の52%をからさらに増加した。

文字通りiPhone 6が大きく売り上げが貢献したわけだが、セグメントごとに見るとアップルの悩みがみえてくる。

iPhoneに吞み込まれたiPod

第一がiPadの不振だ。iPadについては1231万6000台で前年同期時14%減と大幅な減少を記録。iPadは今年1〜3月期にも大幅な販売台数減少を記録した。

サムスン電子のGalaxy NOTEシリーズ(スマートフォンとタブレットを組み合わせた造語である「ファブレット」と呼ばれるジャンル)の世界的な人気やAndroidスマートフォンの大画面化に対して、アップルがiPhone6Plusを投入するなど、明らかにスマートフォンとタブレットのジャンル融合が進んでいる。かつて「音楽専用機」だったiPodがiPhoneの機能の一部に取り込まれたのと同様、iPad需要の一部が強力なiPhoneの引力に飲み込まれているとの見方もできる。

また、市場には「タブレット端末」という市場カテゴリが限定的なものにすぎなかった、との見方もある。iPadが登場する前、タブレット端末は特定用途向けの業務端末としてしか使われていなかったが、アップルはユーザーインターフェイスの工夫やアプリ流通の仕組みをiPhoneから取り入れることで、一般コンシューマーからビジネスパーソンにまで応用範囲を拡げた。新市場ジャンルを自ら創出したわけである。

「個人が自分のために購入するコンピュータとしては、パソコンよりもiPadの方が良いのでは?」との期待感から、“ポストPC”とも言われたが、残念ながらiPadはパソコンほどの柔軟性を提供できていない。今後、一部のビジネスパースンはパソコンへと回帰する可能性もあるだろう。つまりスマートフォンとPCの2台持ち」が標準になるのかもしれない。

さらには新興国におけるAndroidタブレットの成長は、スマートフォン市場における構図と同様に著しい。高価なiPadは(日本はタブレット市場の成長が遅かったこともあり)欧米中心に成長してきたが、その欧米での需要がピークアウトした後に、他地域へと成長の軸足を移すことができていないことも、減速の要因としてカウントできる。

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