iPadは「終わった」?それとも「これから」? 好調決算にみえるアップルの死角

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ただしiPadには朗報もある。それは金額ベースでの落ち込み率が台数と同じ14%であることだ。つまり単価を維持することができている。その間、Windowsタブレット、Androidタブレットの低価格化が依然として進んでいたことを考えると、あえてシェアを狙わずに単価維持を重視したともいえる。

10月の新製品では旧製品を低価格モデルとして残しており、IBMとの提携による法人市場、教育市場の開発を進める準備を進めているのではないだろうか。iPadは急成長の影で用途拡大、市場開拓といった方向へと従来は目が向いていなかっただけに、出荷台数拡大へとつながる市場の余白はまだあると考えられる。価格勝負で大口市場に入り込んでいた他社のタブレットにとって脅威となるのか。あるいは逆にiPadが企業向けで低価格端末に苦戦するのか。

タブレットの戦いは次のラウンドに

もう一つが、地域別売り上げ成長の偏りだ。欧米のみが急伸し、その他がさえないのだ。日本は円安が進行したことからドルベースでの売り上げが伸び悩んだのはやむを得ないだろう。日本は前年同期比で5%成長にとどまった。他方で、見逃せないのは中国市場が1%成長にとどまり、アジア・パシフィック(AP)では3%減となっていること。もちろん新iPhoneの投入がないことも影響しているが、その悪条件は前年同期比も同じであり、その意味では言い訳はできない。

見方は二つある。新興国に食い込むための武器とされた「iPhone5cの失敗」の影響が現れた結果、新興国での存在感を落としたという見方だ。アップル製品は新興国でも人気だが、購入出来る層は限られている。もうひとつは、アップル自身が新興国市場におけるAndroid搭載製品の急伸長を気取って、戦略転換を図っているという見方だ。サムスンが中国市場などの不振からスマートフォン事業の下方修正を余儀なくされたり、ソニーがXperiaシリーズの新興国市場戦略を見直すなど、“スマートフォン市場の裾野”は中国製の低価格Android端末が席巻している。この嵐からは、基本ソフトが異なるアップル製品も逃れられない。

いずれにしろ、ブランド力、そして製品価格を維持しながら成長するアップルのやり方が、欧米市場以外では通用しにくくなっているとは言える。

アップルは、新興国に対しては先代のフラッグシップモデルである「iPhone5s」を売り込んでいく戦略だが、新興国における中国ブランドの伸びは激しい。アップルが価格競争を仕掛けるとは考えにくく、「欧米先進国(日本を含む)の購買に依存した構造」は続くことになりそうだ。

先進国における商品、ブランドの強さが、今のアップルの強さになっているが、今後の成長余力という面での不安要素でもある。今回の決算は好調だったものの、今後、スマートフォン市場が成熟した際に、どういった手が打てるのか。なおも課題は残っている。

本田 雅一 ITジャーナリスト

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ほんだ まさかず / Masakazu Honda

IT、モバイル、オーディオ&ビジュアル、コンテンツビジネス、ネットワークサービス、インターネットカルチャー。テクノロジーとインターネットで結ばれたデジタルライフスタイル、および関連する技術や企業、市場動向について、知識欲の湧く分野全般をカバーするコラムニスト。Impress Watchがサービスインした電子雑誌『MAGon』を通じ、「本田雅一のモバイル通信リターンズ」を創刊。著書に『iCloudとクラウドメディアの夜明け』(ソフトバンク)、『これからスマートフォンが起こすこと。』(東洋経済新報社)。

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