若者の投票率低迷に風穴を開ける能條桃子の正体 18歳選挙権導入で学校でも始まる「主権者教育」

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ポップコーンを食べながら党首討論を見るデンマーク

――そうした中で、大学時代にデンマークに留学されたんですね。

デンマークは「世界一幸せな国」といわれています。そんな公共が保たれた高福祉国家を参考に、高い解像度で日本を見直したいと思いました。私は大学ではなく全寮制の学校に留学したのですが、多様な学生がいました。日本では、勉強ができる子だけが政治について話す印象がありますが、そこでは勉強ができる子もできない子も日本の「九九」の計算のように共通の素養として政治の話をしていることに驚いたのです。

選挙のときは、みんながポップコーンを食べながら、党首討論を見ています。ほかにもデンマークの若者は、学校で授業が面白くなければ、生徒同士で意見を出し合い、それをまとめて意見として先生に提出して改善してもらいます。陰で文句を言うだけの日本とは大違い。何か不都合があれば、変えようとする意思がみんなにあって、とても健全だと思ったのです。

デンマーク留学時代の能條さん。現在の活動に大きな影響を与えた留学だった

――そうした経験から日本の教育はどう変えていけばいいとお考えですか。

学校では、先生だけが正しい答えを知っているという位置づけですが、これからは先生がファシリテーターのような存在になっていく必要があると考えています。大人だけが正しい答えを知っていて、それを子どもたちにインプットしていくという考え方では何も変わりません。情報をインプットすることは大事ですが、最終的には、子どもたちが自身の価値観に基づいて自分の答えを見つけていくということをゴールとすべきです。そうでなければ、民主主義の担い手は育たないと思います。

――そのうえで政治の授業も必要だということですね。

今は右派、左派について説明できる学生はほとんどいない。その意味でも、民主主義の共通知識を中立的な立場で教えていくことが欠かせないのです。また、若者たちの意見を聞く場をつくっていくことも必要でしょう。それも一部の関心の高い若者たちだけのものにするのではなく、幅広い人たちに開かれた場所でなければなりません。

例えば、デンマークでは若者向けの民主主義イベントがあり、ミュージシャンが出演したり、各政党やNGO、NPOが出展したりして、学生による討論会も行われています。興味深いのは、それが自由参加ではなく、強制参加であることです。イベントでどう過ごすかは自由ですが、必ず参加しなければならない。日本でも学校だけでなく、外部と協力するなどして新たな試みをしていくことが大切だと思っています。

――能條さんのNO YOUTH NO JAPANに関心を持つ若者が多いということは、日本でも、そうした場さえあれば、若者も立ち上がる用意があると見ていいはずです。

日本では20代の若者だけでも約1260万人いますが、世代内でも階層があり、それぞれが分断されているのが実情です。しかし、きっかけさえあれば関心を持つ人たちも少なくありません。そこに私たちは微力ながら貢献していきたいと考えています。

例えば、既存のメディアでは政治のニュースを流しても、その「あらすじ」紹介がありません。それでは政治に疎い若者には非常にハードルの高いものに見えてしまいます。これまでこうした経緯があり、だから結果こうなっている。そうした「解説」をしていくと、それが政治に関心を持つきっかけになるかもしれない。今や2011年の東日本大震災を知らない20代も少なくないのです。私たちの活動も、そうしたさまざまな情報を世代間で共有していくことで少しでも前進していこうとしているのです。

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