新日鉄住金を悩ます、中南米戦略の"誤算" 傘下のブラジル企業をめぐり攻防が勃発

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新日鉄住金にとって、ウジミナスは中南米市場深耕の最重要拠点だ(写真はウジミナスのイパチンガ製鉄所)

「所有権と経営権を巡るゴタゴタは、まるで“ねじれ国会”を見ているようだ」――。ある業界関係者はそう突き放す。

新日鉄住金の中南米戦略が揺らぎかねない事態が起きている。同社の持ち分法関連会社でブラジルの鉄鋼大手であるウジミナスの経営権をめぐって、火種がくすぶっているのだ。

発端は役員3人の解任

事の発端は9月25日、役員報酬の不正な受け取りがあったとして、新日鉄住金がウジミナスの社長と2人の副社長を解任したこと。「定められているすべての意思決定手続きにのっとり、解任を決定した」と、新日鉄住金は説明する。

ただ、もう1つの大株主であるアルゼンチン鉄鋼大手・テルニウムは「株主間協定に反している」と反発。現地の裁判所に役員3人(いずれもテルニウム出身)の解任決議の差し止めを訴えた。

その後、テルニウムは10月2日にブラジル銀行年金基金からウジミナス株10.2%を購入すると発表。既存の持ち分と合わせて37.8%を握ることになり、新日鉄住金や三菱商事をはじめとする日系企業(29.4%)を上回る筆頭株主となる見通しだ。

ただ、新日鉄住金はテルニウムが筆頭株主となったことについて、「影響はない。株式を追加購入することも現時点では考えていない」と説明する。テルニウムとの間で株主間協定が結ばれており、経営権について自社の優位が揺らぐことはないと踏むからだ。

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