必要なのは関係者の対話と合意形成
広がりすぎた学校・教師のサービスを一部は我慢していく、あるいは別の主体に代わってもらうためには、各地域、学校で、関係者としっかり話をして、合意形成を図っていくしかない。今回の文科省調査から示唆されるのは、こうした対話やコミュニケーションがまだまだできていない地域、学校も多いのではないか、ということだ。
しかも、コロナ対策でソーシャルディスタンスが求められる中、保護者や地域住民が校長などと顔を合わせる機会すら、なかなかない。これでは言い出しにくいことを言い出せるはずがない。とはいえ、学校も家庭、地域も進めていけることはあるはずだ。
例えば、中学1年生になる家庭向けに、事前の説明会を開く中学校は多い。対面でもオンラインでも構わない。あるいは入学式の後にも生徒や保護者向けにガイダンスがある。そうしたときに「本校では部活動も盛んで、〇〇部は県大会で優勝しました」といったPRをするだけでは駄目だ。その学校の教職員の勤務実態を伝えたうえで、放課後の生徒指導や部活動などのうち、一部は減らしていく必要があることを校長から話してみてはどうか。
私が校長などと話をしていてよく感じるのは、保護者のことを過剰に気にしていることだ。「こんなこと言っていいのだろうか」と変に忖度(そんたく)し、遠慮しすぎている。確かに、過去に理不尽なクレームなどがあって、疲弊してきた経験を持つ教職員にとって、防衛気味な姿勢になるのは理解できる。だが、真摯に事実と意見を伝えないで、事態が進むわけがない。
保護者や地域の側も、何か機会があれば、教職員の勤務実態や働き方が今のままでいいのかなどについて、聞いてみるといい。ここでは詳述する紙幅はないが、コミュニティ・スクール(学校運営協議会)などはそうした場になりうる。
先生が疲れたまま、あるいは睡眠不足のままでは、いい授業にはならないし、子どもたちのケアもうまくいかない。働き方改革を進めて教職員の健康を守っていくことは、学校、保護者、地域が対立する話ではないはずだ。
(注記のない写真: USSIE / PIXTA)
執筆:教育研究家 妹尾昌俊
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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