日本で「勉強が苦行になった」責任はどこにあるか ヒロック初等部・蓑手章吾「学びを捉え直す」とは

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「勉強は苦行じゃない。学びは本来、自身の成長を実感できる楽しいもの」。そんな学びの原点に立ち返るため、2021年3月に公立小学校を辞めて理想の学校づくりをスタートさせた蓑手章吾氏は、これまでICTを活用した授業に率先して取り組み、自由進度学習や特別支援教育などさまざまな経験を重ねてきた。本連載では「楽しくなければ、学びじゃない!新しい学校づくりの現場から」をテーマに、学校教育の課題や社会問題と向き合いながら、本来あるべき学びの姿について考える。今回は、新しい学校をつくる原点ともなった「なぜ、日本では勉強が苦行になったのか」について語ってもらった。

大人と子どもで異なる、勉強に対するイメージ

「勉強」と聞くとどんなイメージを持たれるでしょうか。多くの方が、つらく苦しかった経験を思い出したり、今でも緊張を覚える気持ちを感じたりするのではないでしょうか。

もしかすると、勝ち上がってきた栄光を懐かしむ方もいるかもしれません。どちらにせよ、その多くが「受験勉強」のようなシーンを想起するような気がします。そしてほとんどが「苦行だったけれどやってきてよかった、大切なもの」と思われているのではないでしょうか。

一方、子どもはどう思うかと聞くと、ほとんどが「嫌だけど、やらなきゃいけないもの」と考えているようです。

2020年の12月に文部科学省から、19年に実施された国際数学・理科教育動向調査(以下、TIMSS)の調査結果が公表されました。TIMSSとは、小学校4年生と中学校2年生を対象に、およそ50の国や地域が参加する、算数・数学および理科の到達度調査です。その中の質問紙調査で、「算数・数学の勉強は楽しい」と答えた児童生徒の割合は小・中ともに国際平均を下回り、「理科の勉強は楽しい」と答えた子の割合は、小学生では平均を上回りましたが、中学生ではやはり下回っています。

この調査の興味深いところは、日本の小・中学生の算数・数学や理科の点数が、小・中学校すべての教科で5位以内に入っているという事実です。どうやら「できないから嫌い」なわけではないということです。理解度は高いにもかかわらず、中学生に聞いた質問紙調査では「数学・理科を勉強すると、日常生活に役立つ」「数学・理科を使うことが含まれる職業につきたい」と答えた生徒の割合が、すべての項目で国際平均を大きく下回っています。どうやら日本は世界的に見ても突出して「勉強が苦行」と考えている国といえそうです。

申し遅れました、蓑手章吾です。公立小学校で14年間担任を務め、昨年の3月に職を辞して、現在オルタナティブスクールのHILLOCK(ヒロック)初等部をつくっています。22年4月に東京の世田谷区に開校、私は校長を務めます。

蓑手章吾(みのて・しょうご)
HILLOCK(ヒロック)初等部 校長
公立小学校で14年勤務した後、2021年3月に東京・世田谷にオルタナティブスクール、ヒロック初等部を創設(22年4月開校予定)。専門教科は国語。特別支援学校でのインクルーシブ教育や発達の系統性、学習心理学に関心を持ち、教鞭を執る傍ら大学院にも通い、人間発達プログラムで修士号を取得。特別支援2種免許を所有。プログラミング教育で全国的に有名な東京・小金井の前原小学校では、研究主任やICT主任を歴任するなどICTを活用した教育にも高い関心と経験を持つ。著書に『子どもが自ら学び出す!自由進度学習のはじめかた』(学陽書房)、共著に『before&afterでわかる!研究主任の仕事アップデート』(明治図書)、『知的障害特別支援学校のICTを活用した授業づくり』(ジアース教育新社)などがある
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