グッドウィル折口帝国崩壊! 自滅もたらした日雇い派遣
クリスタル買収で日本の人材サービス最大手に上り詰めたのもつかの間、介護のコムスンの身売り、日雇い派遣の事業停止と満身創痍のグッドウィル・グループ(GWG)。3月危機説も浮上している。
(週刊東洋経済2月16日号より)
1月31日、午前10時半。警視庁の捜査員が、東京・六本木にある「東京ミッドタウン」オフィス棟に姿を現すと、待ち受けた報道陣のカメラから一斉にフラッシュがたかれ、現場は一時騒然とした雰囲気となった。
違法な二重派遣を繰り返したとして、警視庁生活安全部は職業安定法違反(労働者供給事業の禁止)の疑いで港湾運送関連会社の東和リースのほか、関係先として日雇い派遣最大手グッドウィル(GW)本社などを家宅捜索した。
介護業者・コムスンの不正を皮切りとするGWGに関する一連の問題に関し、警察による強制捜査が行われるのは初めて。当局は二重派遣に関してGW側の組織的関与があったかどうかについて調べる方針だ。
今回の捜査は、厚生労働省東京労働局の刑事告発がきっかけだ。東京労働局は1月11日、GWが二重派遣に加え、労働者派遣法で禁止されている港湾や建設業務への派遣を繰り返したとして、事業所別に2カ月から4カ月間の事業停止命令を行った。この処分とは別に、東和リースを警視庁に刑事告発。労働局が警察による捜査を促したのは、東和リースやGWが絡む一連の日雇い派遣について、違法行為が常態化し悪質性が高いと判断してのことだ。
昨年の本誌8月25日号で既報のとおり、2007年2月、GWスタッフとして東和リースを介した二重派遣で、港湾業者・笹田組の現場で作業していた20代後半の男性が、左脚を脱臼骨折し3本の靭帯が切れる重傷を負った。ヘルメットも与えられず倉庫内の荷崩れを戻している最中、再度の荷崩れに巻き込まれた。
男性は06年8月から同じ会社に長期間継続して派遣される「定番」と呼ばれる勤務形態で東和リースを介して笹田組など様々な港湾業者に派遣されており、東和リースの指示で法律で禁じられている倉庫での港湾業務や船内作業も行っていた。
この件で昨年7月に取材に応じた東和リース取締役は、二重派遣に関して「結果的にはそうだった」と認めたうえで、GW側の違法派遣の認識に関しても「彼らも、もともとは請負事業者だったし、付き合いは13年にもなる。当然すべてわかっていたはず」と話した。
ケガをした男性によると、勤務後に「船で働きました」とGWの支店に電話すると、給与明細の「特殊勤務車両」名目で日給に500円が上乗せされていた。GWが二重派遣のみならず、禁止業務への派遣を黙認していた疑いは濃厚だ。
この男性が入院中、見舞いに訪れたGWの支店長に真っ先に尋ねたのは、同社独自の「保険」の支払いについてだった。それに対して支店長は「保険はない。今回は労災で賄う」と返答した。男性が尋ねたのはほかでもない。GWは、それまで一稼動につき200円を賃金から天引きする「データ装備費」に、保険が含まれていると説明してきたからだ。彼が渡された「スタッフマニュアル」には安全共済の掛け金との記載がある。