パリ―ウィーン間「夜行列車」14年ぶり復活の意義 環境問題が後押し、路線網拡大はさらに進むか

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ウィーン中央駅で発車を待つパリ行きナイトジェット(筆者撮影)
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2021年12月13日19時40分、オーストリアのウィーン中央駅から青い車体の列車が大勢の観衆に見送られて静かに発車した。この列車の行き先は、1000km以上離れたフランスのパリ。ウィーンとパリを乗り換えなしで結ぶ列車が、2007年6月以来約14年ぶりに復活した瞬間でもあった。

列車はオーストリア鉄道(ÖBB)が運行する夜行列車ナイトジェットで、当面は週3往復を運行。ナイトジェットはこの数年、利用客数の増加によって次々と路線網を拡大してきたが、ヨーロッパでも屈指の大都市であるパリへの乗り入れは1つの大きな目標であったと言えよう。

この歴史的な日、ウィーンでは出発前にセレモニーが開かれ、オーストリアのレオノール・ゲヴェスラー気候保護大臣、フランスのジャン・バティスト・ジェッバリ運輸大臣、そしてオーストリア鉄道のアンドレアス・マッテCEOらが夜行列車運行の意義と必要性について熱弁を振るった。3氏はそのまま1番列車へ乗車し、パリへ向かった。この重要なゲストを迎え入れるため、列車は本来7両編成のところ、特別に増結されて10両となっており、SPを含む警備員が各客車に配置されるなど物々しい雰囲気となった。

「満席」だが実際はガラガラ

今回、筆者は1番列車へ乗車するため、発売と同時にチケットを手配した。その時点ですでに寝台車とクシェット(簡易寝台)は満席で空きは座席車しかなかったため、超満員を覚悟して乗り込んだ。

パリ行き「ナイトジェット」の車体にはフランス国鉄を示すSNCFのロゴが入る(筆者撮影)

だが、いざ乗車してみると乗客はほとんど乗っていないようで、想像していた状況とまったく異なり拍子抜けだった。私の予約したコンパートメントはなぜか6席とも埋まっていたものの、ほかの部屋は誰もいなかったので、空いている部屋を貸し切りのようにして使った。完全予約制なので、予約札が入っていなければ誰も乗ってくることはない。要人の乗車を考慮して意図的に予約がブロックされていたようだ。

ウィーンを出発した列車は、オーストリア国内を時速200kmの速度を維持して快調に走る。夜行列車はのんびり走る「夜汽車」のイメージがあるので意外に思うかもしれないが、実際はかなりの高速で運転される。

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