仮設から仮設へ、復興商店街の厳しい前途 震災3年半後の宮城・気仙沼で起きていること

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「見学台」からの眺望。土地区画整理事業が進む

それでも賢一さんは「進捗の遅れ」自体を問題視してはいない。「問題なのは市の計画のなさ」だという。鹿折地区では巨費を投じて区画整理事業が実施され、住宅地、商業地、工業地、公園・緑地などにエリアが分けられる。284戸の災害公営住宅や市民福祉センターも建設される。しかし、それ以外は町づくりに関する計画はほとんどなく、どれだけの住民が戻ってくるかも未知数だ。

「もともと20数軒あった商店会加盟の店舗は震災で散り散りになった。跡継ぎがいる店舗も2~3店しかいない」(賢一さん)という。土地区画整理事業終了後、本設の店舗を再建するための費用は、個々の店舗が用意するしかない。高齢化が進む商店主にとって、事業再開自体が厳しい。

「今は震災をきっかけにお世話になった方々に恩返しのつもりでやっているけれど、70歳を前にして正直いつまでやれるかもわからない。まあ、頑張っているうちに先が見えてくるのではないかな」と前出の重美さん。成り行きに任せざるを得ないという。

10月5日にグランドオープンを迎える「鹿折復幸マート」は、想像以上の厳しい現実に直面している。

岡田 広行 東洋経済 解説部コラムニスト

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おかだ ひろゆき / Hiroyuki Okada

1966年10月生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒。1990年、東洋経済新報社入社。産業部、『会社四季報』編集部、『週刊東洋経済』編集部、企業情報部などを経て、現在、解説部コラムニスト。電力・ガス業界を担当し、エネルギー・環境問題について執筆するほか、2011年3月の東日本大震災発生以来、被災地の取材も続けている。著書に『被災弱者』(岩波新書)

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