ソニー最終赤字2300億円で初の無配へ、スマホ販売不振 1958年の上場以来、初の無配

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9月17日、 ソニーは2014年3月期の連結業績予想を2300億円の赤字に下方修正したと発表した。写真は都内の本社。5月撮影(2014年 ロイター/Yuya Shino)

[東京 17日 ロイター] - ソニー<6758.T>は17日、2015年3月期の連結当期純損益予想を2300億円の赤字に下方修正したと発表した。従来予想は500億円の赤字(前年同期は1284億円の赤字)。

スマートフォン(スマホ)の販売不振を背景に、モバイル子会社の営業権の全額1800億円を減損損失として計上する。今期は1958年の上場以来初めて無配とする。

スマホ事業の縮小に伴って、子会社ソニー・モバイルコミュニケ―ションズの全世界の従業員の15%に相当する1000人を今期中に削減する方針も発表した。今期は、本社や販売会社で構造改革を進めているが、追加の人員削減となる。

ソニーのスマホ事業は、2012年2月に旧ソニー・エリクソン(現ソニー・モバイル)を完全子会社化し、一時は、韓国サムスン電子<005930.KS>、米アップル<AAPL.O>に次ぐ「世界3位」を目指すなど規模拡大路線を走ってきたが、事業縮小に伴う減損計上で転換点を迎える。

減損額の1800億円は、ソニー・エリクソン完全子会社化の際に計上した営業権の全額に当たる。過去6年間で5回の最終赤字を計上した中でも継続してきた配当を見送ることについて、記者会見した平井一夫社長は「経営責任を重く受け止めている」と語った。

その上で「私が中心になって、不退転の決意で業績を回復し、早い段階で復配する。ソニーのビジネスを立て直していくことが私の一番の責任だ」と語った。

<拡大路線を転換、国や地域を絞り込み>

今期のスマホ事業は、小米科技(シャオミ)など中国メーカーの躍進を背景に、新興国での販売に苦戦。価格競争の激化で販売が伸びず、今年4―6月期決算では、2015年3月期の販売予想を、期初計画の5000万台から4300万台に下方修正した。

平井社長は今後のスマホ事業について「市場シェアや台数を追う拡大戦略を変えて、リスクを認識して収益性を追っていく」と述べ、全世界で販売を拡大する路線を転換し、先進国など収益のとれる国や地域に経営資源を絞り込む方針を示した。

モバイル事業は、ソニー・モバイル発足の初年度に当たる2012年度に411億円の営業赤字、翌13年度に126億円の営業黒字を計上。今期は、期初に260億円の黒字を見込み、4─6月期で損益ゼロを見通していたが、減損額を織り込んで再び赤字に転落する見通し。

一方で、ソニーにとってスマホ事業は、ゲーム事業、イメージング事業とともに「コア3事業」。減損で事業縮小を決断したが、平井社長は「モバイル事業はこれからも重要。スマホの市場はまだ伸びているし、スマホの次の事業の土台も作らなければいけない」と述べ、今後も中核事業の1つとする方針に変更はないことも強調した。

<業績予想の一段の下振れも>

液晶テレビやゲームを含むエレクトロニクス事業は2014年3月期まで3年連続で赤字を計上。今期は、液晶テレビ事業を11年ぶりに黒字化させる目標を示すなど、4年ぶりのエレクトロニクス黒字化を計画していたが、モバイル事業の減損計上で、それも厳しくなった。

2015年3月期の連結業績予想は、モバイル事業の営業権の減損を織り込んで、営業損益と当期純損益について、それぞれ1800億円分を下方修正。だが、追加の構造改革として発表したモバイル事業の人員削減の関連費用を織り込んでおらず、一段の下振れリスクも残した。

ソニーは前期、3回の下方修正を繰り返して、市場の信頼を失っている。今回の下方修正は、今期に入って1度目だが、平井社長が就任した12年4月から数えれば、通算6回目にのぼる。

吉田憲一郎・最高財務責任者(CFO)は、今回の修正には、追加の人員削減費用を含めていないことを認めた上で「下振れリスクは中間決算で説明したい」と述べ、追加の下方修正を示唆した。

*内容を追加して再送します。

(村井令二 編集:北松克朗)

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