軟着陸か、失速かどちらもあり得る22年の米経済 金融・財政両翼の浮力を大きく奪われる可能性

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2022年の米経済は金融、財政両翼の浮力を大きく奪われた形で新型コロナウイルス感染再拡大との共存を余儀なくされる可能性がある。米連邦準備制度のタカ派姿勢転換に加え、バイデン大統領の優先経済施策を盛り込んだ税制・支出法案が民主党のマンチン上院議員の反対で成立が危ぶまれる事態となっていることが特に深刻だ。

連邦公開市場委員会(FOMC)は先週の会合で資産購入のテーパリング(段階的縮小)完了を来年3月半ばに前倒しすることを決め、早期利上げ開始の態勢を整えたが、パンデミック(世界的大流行)の最も厳しい時期に講じられた政府の支援策は打ち切られることになっている。民主党が税制・支出法案の成立にこぎ着けることができなければ、財政面の浮力はさらに失われる。

  

米経済は21年10-12月(第4四半期)に7%以上の急成長が見込まれているものの、エコノミストは今後の金融・財政政策の動向次第では、政策に起因する減速に見舞われる恐れがあると予想する。

その結果、過去数十年ぶりの高水準に達しているインフレの鈍化につながれば朗報である一方、既に米経済活動の一部に影響を及ぼしているオミクロン変異株感染拡大のようなショックに対し、一段と脆弱(ぜいじゃく)な状態に置かれることにもなりかねない。

ブルッキングズ研究所ハミルトン・プロジェクトのディレクター、ウェンディ・エーデルバーグ氏はオミクロン株について、旅行や外食など対面サービスへの個人消費が手控えられ、「経済に多少の打撃をもたらすだろう」としつつも、景気拡大が行き詰まることはないだろうと強調する。

こうした状況で、パウエル連邦準備制度理事会(FRB)議長ら金融当局者は米経済のソフトランディング(軟着陸)を目指す上で、来年3回の利上げ見通しに必ずしも固執することなく、機敏な政策運営に努めることが一層強く求められる。

ムーディーズ・アナリティクスのチーフエコノミスト、マーク・ザンディ氏は「非常に多くの変数や不確実性がある。ある瞬間には時速100マイルの向かい風が吹き、別の瞬間には時速100マイルの追い風が吹く嵐の中で滑走路に経済の飛行機を着陸させようとするのと同然だ」と説明した。

民主党のマンチン上院議員は現在の形ではバイデン大統領の税制・支出法案を支持できないとの立場を表明Source: Bloomberg

エコノミストの一部は、政府の経済対策で支給された直接給付金などにより、2兆-3兆ドルが個人貯蓄に回った点に言及。元FRB副議長で、現在はプリンストン大学教授のアラン・ブラインダー氏はこうした貯蓄が「リセッション(景気後退)に対する一種の保険」としての役割を果たすだろうと話す。

また、ハミルトン・プロジェクトのエーデルバーグ氏は、レストランや倉庫などで雇用主が人手不足に対応して給与引き上げを迫られているため、低所得労働者は大幅賃上げの恩恵を受けていると指摘した。

ただ、ムーディーズ・アナリティクスのザンディ氏は、民主党が税制・支出法案の承認に至らなければ22年第4四半期の成長率は1.5%を下回るペースに大幅鈍化すると予測。「他に何かうまくいかないことがあれば、失速しかねない」と警告した。

原題:

U.S. Economy Loses Fed, Fiscal Props After Powell-Manchin Pivots(抜粋)

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著者:Rich Miller、Mike Dorning

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