ロンドン地下鉄大ピンチ、財政難で路線閉鎖も コロナ禍で収入激減、政府救済も期限が迫る
父親が公共バスの運転手だったことでも知られるロンドン市長のサディク・カーン氏は、不足する資金の分を自前で解決するなら不採算路線のカットが必要と指摘。「縮小規模は地下鉄ネットワークのうち9%、バスは18%」と表明した。
これを具体的な路線数でいえば、11路線ある地下鉄は少なくとも1路線を閉鎖、バスは100路線以上を廃止し、200以上の路線で運行頻度を下げることになる。
交通局財務部門の幹部は、具体的な削減案についてはまだ検討中としている。地下鉄については1路線の完全閉鎖か、あるいはネットワーク全体で少しずつ運行を削減するのが適切なのか、影響については分析中としている。
ただ、これらの分析はオミクロン株の発見直前に立てられたものだ。イギリスでは明らかにオミクロン株の市中感染が広がっており、12月13日からはまたもや「可能な限りのテレワークの実施」が求められ、目に見えて通勤者数が激減している。
「これ以上削るところがない」
カーン市長は交通局の財政健全化に向けて、すでに過去5年間で年間10億ポンド(約1514億円)のランニングコストを削減し、大規模な効率化を実現したと主張。「政府からのさらなる投資がなければ帳尻を合わせることはできない」と、現状では削減可能な余地がないとして、支援の手を差し伸べてほしいと国に訴えている。
交通局は過去数年にわたって、資金調達方法の適正化や財政危機克服について幾度となく問題が指摘されていた。しかし、今回の財政危機は「コロナ禍による需要減少」であることは明らかだという。
ロンドンの公共交通網は、コロナ禍前は旅客運賃収入や広告収入でほぼ黒字だった。イギリスの公共放送BBCはロンドンについて「公共交通の運営費を支えるための政府援助を受けていない世界でも数少ない都市」と指摘している。もっとも、これはここ数年のことで、かつては政府から年間約6億ポンド(約900億円)の運営補助金を受け取っていた。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら