学校をよくしたいに壁、疲弊する教職員つなぐ訳 フキダシプロジェクトは公教育に風穴開けるか
同時にモヤモヤしたのが、 オルタナティブスクールやフリースクールで働く教職員の方々と、公立学校の教職員の方々が見ている世界があまりにも違うことに気づいたこと。両者とも、目の前にいる子どもたちのために一生懸命なのは、紛れもない事実です。
オルタナティブスクールやフリースクールなど多様な学びの場は、これまでの学校文化や仕組みの中で苦しい思いをしている子どもたちを受け止めるために必要で、このような場はこれからも広がり、活発化していくことが見て取れます。
しかし、その一方で、公教育に改めて目を向けてみると、教職員の多忙化や増え続ける教育内容、不登校の増加などさまざまな課題が複雑に絡み合いながら、公教育全般が地盤沈下を起こしているように感じました。現状に疑問を抱き、葛藤し、コロナ禍が続く中、日々疲弊しながらも『せめて自分ができることを』といっぱいいっぱいになりながら子どもたちを支える教職員の方々を目の当たりにし、このような教職員の声をすくい上げてより多くの人に届けたい。公教育に軸足を置いた新たな取り組みを立ち上げ、学校と学校を取り巻く環境を変えていきたいと思い、今回のプロジェクトに行き着きました」
「自分たちの声が社会に届いている」という実感を
「School Voice Project」のユーザー登録者数は、約900名(21年10月現在)。武田氏を含め3名の事務局スタッフに加え、これまでの活動で関わりがあり、プロジェクトに共感・参画する約100名の教職員を「アンバサダー」と位置づけ、アンケートの内容を検討したり、ワーキンググループをつくったりしながらプロジェクトを進めていくという。
「まずやりたいのは、アンバサダー同士の関わりを深めること。コロナの状況にもよりますが、“学校をもっとよくしていくための対話合宿”を計画しています。ユーザー限定のイベントやオンラインサロンも開催し、教職員同士がつながって皆で考えたり支え合ったりしながら自分たちでアクションを起こしていけるようなコミュニティーを目指しています。
運営面では、まずは数千人規模のユーザー登録を目指し、登録してくれた方がアクティブに回答できるようなプラットフォームにしていきたいですね。教職員の声が合わさって“面”になり、可視化できるようになると、それを基に保護者、フリースクールやオルタナティブスクールの人たちなど、さまざまな属性を持つ人と対話できるようになります。例えば、不登校をテーマにアンケートを取れば、その回答を基に、公立学校の教職員とフリースクール関係者が対話する会を開催することで、立場が異なるがゆえの分断を防ぐことができると思います。
アンケートの中には、教員免許更新制廃止についてなど賛否を問うものもあります。そこで、例えば『9割が賛成、1割が反対』という結果が出た場合に、『9割の教員が廃止に賛成しているので廃止にしてください』という提言をしてしまうと1割の声がなかったことになってしまうし、答えてくれた人に対しても不誠実です。『賛成の人は、こういうことを言っていて、反対の人はこういうことを言っています。これらから、こんな論点が見えてきました』など、公正でニュートラルな発信を心がけています」