学校をよくしたいに壁、疲弊する教職員つなぐ訳 フキダシプロジェクトは公教育に風穴開けるか

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武田氏が教育を軸とした活動を始めたのは、大学時代に国際NGOピースボートの「地球一周の船旅」に参加したのがきっかけだった(写真:武田氏提供)

「101日かけてアジア、アフリカ、南米、太平洋の島々を巡りながら、年齢や立場など多種多様な人たちと対話を重ねるうち、これまで小・中・高での学びを通して培われてきた自分の価値観は、大人が広げてくれた枠の中だけで培われてきたことに気づいたのです。私が生まれ育ったのは大阪で人権教育が盛んに行われ、教科学習以外にもさまざまな人権問題を学んできたのですが、『なぜなのか』『本当に正しいのか』といったクリティカルシンキングを伸ばすような教育ではなかった。これから大切なのは、立場や背景の違う人と対話しながらさまざまな意見を聞き、自分なりの物の見方や価値観を育んでいくような教育なのではないか、と思いました」

これを機に07年、同じ志を持つ仲間とともに「教育の多様性体感プロジェクト『CORE+』」を立ち上げ、教員志望の友人や学生仲間と、オルタナティブスクールを中心に国内の多様な教育現場を訪問する取り組みを始めた武田氏。「EDUTRIP」と名付け、単なる“先進事例の視察”ではなく、視察しながら一緒に訪れた仲間と対話を重ね、それまで無意識のうちにとらわれていた自分自身の常識や価値観に気づき、教育や学校について改めて考え合う機会を創出してきた。

「教育の多様性体感プロジェクト『CORE+』」を立ち上げ、教員志望の友人や学生仲間と、オルタナティブスクールを中心に国内の多様な教育現場を訪問する取り組みを始めた(写真:武田氏提供)

11年からは、オランダを皮切りに海外の「EDUTRIP」も開始。夏休みなど長期休暇中に開催したため、これまでのNPO関係者や教員志望の学生に加え現役教員の参加が増え、全体の7〜8割を占めるようになったという。

「EDUTRIP」に加え、ユニークな取り組みをしている公立・私立の学校やフリースクール、オルタナティブスクール、教育NPO、企業などが一堂に集まり、出展者、参加者が垣根なくつながりながら多様な教育観に触れ、自分の教育観を見つめることができるイベント「エデュコレ〜多様な教育の博覧会」も開催。09年の大阪を皮切りに、関東、東海、関西、九州でも開催し、裾野を広げてきた。18年からフリーランスに転身し、これらの活動を続けている。

海外の教育現場を訪問する「EDUTRIP」も開始。写真はデンマーク(写真:武田氏提供)

揺さぶるだけでなく、伴走し、支え合えるコミュニティーを

このような活動の中で、武田氏は、いくつかのジレンマと向き合うことになる。

「ツアーやイベントに参加してくださった教職員の方々は、これらを機にご自身のマインドをリセットしたり問題意識を抱いたりして現場に戻るわけですが、例えばある先生が『子どもが主体の学び場をつくりたい』と思っても、まだ経験や力量が不足していたり、周りの先生と折り合わなかったりといった現実の壁にぶつかり実現できず、結果的に苦しくなってしまうことも少なくないことに気づいたのです。 ただ“揺さぶる”だけではなく、伴走したり、支え合ったりするコミュニティーの必要性を感じました。

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