「ランクル70」、10年ぶり復活の理由 トヨタがこだわった"最強のオフロード車"

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ランクル、特に70の開発では、「信頼性、耐久性、走破性。この3つは絶対に犠牲にしない」(小鑓チーフエンジニア)。過酷な環境で壊れたら、それは人命にも直結する。「だから壊れない。たとえ壊れても戻ってこられる自動車であることを重視している」。鋪装された平地を走る限りにおいては、「300万キロメートルでも400万キロメートルでも何ともない」(同)。

もちろん、快適性や燃費も大事だが、優先順位はそこにはない。今回の2モデルの燃費は、1リッター当たり6.6キロメートルと、ハイブリッド車で低燃費が代名詞となる、トヨタの自動車とは思えない水準だ。が、欠点よりも、その突出した個性を魅力に感じるユーザーも少なくない。

ランクル70の受注を見ると、バン500台、ピックアップ250台の計750台に達する。月販目標とする200台を大きく上回っている。

「信頼性、耐久性、走破性は犠牲にしない」と言い切るチーフエンジニアの小鑓貞嘉氏

近年、新興国を中心にランクルの販売台数は右肩上がり。2013年は全世界、シリーズトータルで、40万台弱を売り切った。

販売の9割以上は海外であるのに対し、生産は70を含めてほとんどを、国内で生産する(ケニアでの組み立てと中国向けのみ中国生産がある)。しかも部品の90%は日本製だ。

近年、大手自動車メーカーは、消費地の近くで生産することを基本としており、それはトヨタも同じ。その中で、国内生産300万台を守ることを公言しているトヨタにとって、輸出でも圧倒的な競争力を維持するランクルは心強い存在なのだ。

トヨタのクルマは平均点は高いが、面白みがないと評されることが多い。トヨタ自身もこのことを否定しない。そして、その殻を打ち破りたいと考えている。

昨年の東京モーターショーでスピーチをした加藤光久副社長は、「嫌いじゃないけど、好きでもない。そんなクルマはいらないと思っている。好きで好きでたまらない、このクルマ以外は考えられない。お客様にそう思っていただけるクルマを造ること。それがトヨタのクルマづくりの方向性だ」と言い切った。

ランクル、ましてや70は数が出るクルマではないかもしれない。だが、トヨタが目指す理想像にもっとも近いクルマの1つだ。

山田 雄大 東洋経済 コラムニスト

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やまだ たけひろ / Takehiro Yamada

1971年生まれ。1994年、上智大学経済学部卒、東洋経済新報社入社。『週刊東洋経済』編集部に在籍したこともあるが、記者生活の大半は業界担当の現場記者。情報通信やインターネット、電機、自動車、鉄鋼業界などを担当。日本証券アナリスト協会検定会員。2006年には同期の山田雄一郎記者との共著『トリックスター 「村上ファンド」4444億円の闇』(東洋経済新報社)を著す。社内に山田姓が多いため「たけひろ」ではなく「ゆうだい」と呼ばれる。

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