アップルとEUの「児童ポルノ画像検出」の危うさ サイバー専門家が警告する監視社会への道

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アップルによる「クライアントサイド・スキャニング」の問題点を複数のセキュリティー専門家が指摘している(写真:Jeenah Moon/Bloomberg)

十数名の著名なサイバーセキュリティー専門家は10月14日、アップルと欧州連合(EU)が人々の携帯電話から不正な情報を検出する目的で進めている計画を批判する文書を公開。これらの取り組みは効果的ではないばかりか、政府の監視強化につながる危険な戦略だと断じた。

46ページにわたる研究資料の中で専門家らは、iPhoneに保存された児童に対する性的虐待(児童ポルノ)画像の検出に向けたアップルの提案に加え、暗号化されたデバイス上で同様の性的虐待やテロリスト関連の画像を検出するためにEU加盟国が後押ししているアイデアには「危険なテクノロジー」が使われていると指摘した。

「善良な市民に対してスパイ行為を行い、影響を及ぼそうとする計画に抵抗することは、国家安全保障上の優先事項であるべきだ」と専門家らは文書に記している。

独裁者に悪用される危険性

「クライアントサイド・スキャニング」と呼ばれるこの技術は、アップルが同社のストレージサービス「iCloud」にアップロードされた画像をスキャンし、利用者のスマートフォンに保存されている児童ポルノ画像を検出するというもの。ヨーロッパでの検出は、法執行機関の職員によって行われる可能性がある。

アップルが児童ポルノ検出機能を発表したのは8月。同社はこのとき、画像そのものではなく、画像のデータ的な特徴を児童の性的虐待コンテンツに関する既存のデータベースと照合し、一致する可能性があるものを捜し出すと述べていた。

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