イギリスまさかの「ガソリン不足で行列」のなぜ コロナの出口でブレグジットの亡霊に襲われた

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イギリス全国のガソリンスタンドで燃料の在庫が底をつき、人々がパニックに陥った(写真:Jason Alden/Bloomberg)

まるで1974年のようにイギリス人がガソリンスタンドに行列することになったのはブレグジット(ヨーロッパ連合=EU離脱)のせいだ――。結果の確定していないドイツ総選挙の暫定勝者にそう言われることほど、イギリス政府をいらだたせることもないだろう。

だが現実に、ドイツの社会民主党(SPD)重鎮オラフ・ショルツ氏は9月27日、EUが保証する移動の自由があれば、イギリス国内でガソリン供給の妨げとなっているトラック運転手の不足は和らげられていたはずだ、と記者団に語った。

一般の人にとっては、ショルツ氏の批判は古くさく聞こえたかもしれない。というのは、イギリスではもはやブレグジットは議論のテーマになっていないからだ。国民のほぼ全員が離脱問題に疲弊し、その後、イギリスの話題は他国同様、パンデミック一色に染まった。

ブレグジットによる商業活動の混乱は、新型コロナウイルスとそれによる何カ月という経済活動の停止によって覆い隠されてきたわけである。ところが、その覆いは9月下旬に剥がれ落ちた。全国のガソリンスタンドで燃料の在庫が底をつき、人々がパニックに陥ったためだ。ガソリンスタンドの前には給油待ちの車で長蛇の列ができた。

トラック運転手が足りなくなった理由

この危機の背後には世界的な力学もあるため、すべてをブレグジットのせいにするわけにはいかない。しかし、ブレグジット特有の原因があるのは紛れもない事実だ。トラック運転手の不足は10万人と推計され、うち約2万人は外国人運転手による。コロナ禍で帰国した後、イギリスに戻らなかった人たちで、ブレグジット後に厳格化された労働ビザの取得要件が今年に入って効力を持ったことも影響した。

ボリス・ジョンソン首相は9月下旬に現実を認め、軌道修正。運転手不足を補うため、外国人トラック運転手向けに3カ月の就労ビザを5000人分発給すると発表した(同時に軍の運転手も燃料輸送のために待機させたが、こちらはまだ動員には至っていない)。

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