1つ目は、「実質値上げ」は2013~2015年に相次いだが、その後も食品価格が上昇していたにもかかわらず、徐々に減少していったことである。つまり、「実質値上げ」は一巡した可能性がある。
そもそも、「実質値上げ」はただ単純に値上げを「隠す」ために行われるわけではない。例えば、明治ホールディングスは2016年に「おいしい牛乳」の容量を1リットルから0.9リットルに変更した。その理由は、自社の飲用実態調査で牛乳の消費量が過去10年間で1割落ちたとする結果や1リットルを飲みきるまでの日数が延びているとする状況を勘案したことにあるという(SankeiBiz、2019年9月の記事)。
この背景には、平均世帯人員の減少がある。むろん、足元でも世帯人員は減少傾向にあるが、この5~6年で「再び世帯の状況が変化した」というのは無理があるだろう。
消費者物価指数の基礎統計である小売物価統計の調査品目について、筆者が確認した過去の「実質値上げ」は次ページに掲載している。これらの品目では、再度「実質値上げ」が行われるのではなく、「ダイレクト値上げ」となる可能性が高い。
「実質値上げ」にはネガティブな見方が多かった
2つ目の理由は、こうした「実質値上げ」はあまり好感をもって受け入れられていなかった点である。
消費者庁の物価モニター調査(2018年7月)によると、「3年前と比較して実質値上げが増えたと感じる」と回答した人は82.2%にのぼり、多くの消費者が内容量の減少などを感じ取っていた。さらに、「日常的に買っている商品について、実質値上げが原因で買う商品を変えた、または買うのをやめたことがある」と回答した人は24.8%、「実質値上げは不誠実だと感じる」が24.2%と否定的な意見を持つ人が多かった。
これもまた、徐々に「実質値上げ」が下火になっていった背景とみられ、あくまでも「実質値上げ」は一時的な「裏技」という面があったと言える。
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