高校生の青春時代というのは、とても多感で、苦しくて、それでいて甘酸っぱい時期です。自分の人生というものを本気で考えて、正しいか間違っているかわからないけれど進んでいく。でも、そこまで大人にもなれないから、何かが毎日の容量の大部分を占めたりする。本当にささいなことで思い悩んで、どうでもいいことで救われてしまったりします。
そんな青春時代にあって、この物語は高校生の精神の揺れ動き方をよく表しています。
この物語の裏側にあるのは、学校という閉鎖空間における生きづらさです。誰が悪いわけでもないのに、集団というのは時に個人に暴力的になりがちです。SNSで個人がすぐにつながれる時代において、それは本当によく発生していることだと思います。
ここでは、それを水槽に例えています。狭い水槽の中で生きなければならないのが、現代の若者たちである、と。主人公は「旦那さん」から教わって、上手な息の仕方を覚えていく。そして、彩りのなかった生活が、ワクワクする出来事で色づいていくのです。
それは、もしかしたらほかの誰かにとっては何でもないことで、違う人から見れば取るに足らない出来事なのかもしれないけれど、彼女にとっては毎日のすべてで、明日を生きる人生の糧だった。確かに、青春時代というのはそういう要素をはらんでいます。
何でもないことに、救われてしまったりする。どうでもいいことが明日の希望になったりする。そして、ほんのささいなことで、そんな希望に裏切られたりする。この物語は、そんな当たり前の青春を教えてくれます。
いずれの作品も、今の子どもたちの状況が生でわかる作品なのではないかと思います。「子どもってよくわからない」と悩んだとき、手に取ってみてはいかがでしょうか。彼らを理解するきっかけがつかめるかもしれません。
(注記のない写真はiStock)
執筆:西岡壱誠
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
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