「現代の子どもはわからない」時にお薦めの本3冊 東大生作家が厳選、若者の心模様を描いた作品

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まず最初にご紹介したいのが、神山健治著『小説 東のエデン』(メディアファクトリー/KADOKAWA)です。

「100億円を与えられてこの国を救えるか?」をテーマにした作品です。主人公たちは「100億円で日本をよくする」という謎のゲームに巻き込まれて、日本を変えるために奔走するという話になります。

この作品は、今の若者たちの周りにある「空気」がよくわかる作品です。100億円なんてぶっ飛んだ設定でありながら、ここに出てくる少年少女たちは本当に現実にいそうな若者たちで、大学での人間関係や就活でさまざまな問題を抱えながらも頑張ろうとしています。そして、この作品で伝えているのは、そんな彼ら彼女らの周りにある「諦観」という空気感です。

みんな何かを諦めていて、みんなどこかで「まあいいや」と考える。そんな人たちが大多数で、何かを努力する人なんてつまらないと一蹴される。少子高齢化で子どもよりも大人のほうが圧倒的に多くなった日本では、新しいことをやろうとするよりも、今までどおりでいいんじゃないかと考える空気感があって、それにみんなのまれている……。そういうことがわかる作品だなと思います。

「大人」と「子ども」の境目とは

『明日の子供たち』(幻冬舎)著/有川浩

次は、有川浩著『明日の子供たち』(幻冬舎)です。

大人になるためには、何が必要なのでしょうか。僕は自分が「大人」だとは胸を張って言えませんし、たぶんこの本を読む読者のほとんどが、この問いを自分にするのだと思います。

この本は、「児童養護施設」を舞台にしており、その話を通じて、「大人」と「子ども」というものの境目を、そして子どもが大人になるために必要なことを、読む人に考えるきっかけをくれる本です。

「聞き分けのいい子ども」や「大人より大人びている子ども」が登場し、そこで生きる「子ども」の内面の成熟、“一人で誰にも頼らずに生きていかなければならない”という心の内側に驚かされます。そしてそんな子どもたちと真剣に向き合い、時に泣き、時に笑いながら懸命に働く職員たちの姿に驚き、そして感動する……という作品です。

その中で、自分は本当に大人なのだろうか、この子どもたちのほうがひょっとしたら大人なんじゃないか、なんて考えて、 子どもと向き合う目線が大きく変わっていくのではないかと思います。

狭い水槽の中で、生きなければならない現代の若者たち

『青春離婚』(星海社)漫画/HERO 原作/ 紅玉いづき

最後は、紅玉いづき原作のコミック『青春離婚』(星海社)です。

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