こんなふうに日頃から書いていると、子どもたちは行事後の振り返りの作文もまったく抵抗なく5分程度でサラサラと書きますよ。「えー! やだー!」という声が出ません。これはほかの先生からも驚かれます。
「作家の時間」を始める前まで「作文嫌い」と言っていた子が、しだいに「先生、今日作家の時間ある?」「休み時間もやってもいい?」と聞いてきたり、放課後に残って書いたり家で続きを書いてきたり。「読まれたくない」と書いたものを隠していた子が「まだ途中だけど読んで!」と言うようになったりもします。そんな変化を目の当たりにすると、「すごいな」と思いますね。
進めていくうえで大事なのは、ポジティブに肯定してあげること。どうしても苦手な子はいるので、とくに最初のうちは誰もが取り組みやすいよう配慮することが大切です。
1つ、忘れられないエピソードがあります。あるクラスで「教室のどこで書いてもいい、寝ながら書いてもいい」と伝えたら、黒板の上に乗ろうとしたやんちゃな子がいました。結局うまく登れなくて降りたのですが、黒板の縁にたまっていたチョークの粉かホコリが足に付着したようで、着地したときに紙に足形が付いたんですね。
それを僕が「これも詩だね」と褒めたら、彼はとても喜んでものすごい勢いで詩を書き始めました。「あいつがやる気になっているところを初めて見た」なんて周囲の子も驚いていましたが、後日聞いた話では、彼は卒業文集にこのエピソードをつづり「これを機に詩を書くのが苦手ではなくなった」と書いてくれたそうです。とてもうれしかったですね。

1978年生まれ、北海道出身。東京都の公立小学校教員として14年間勤務。2016年、主に病気休職の教員の代わりに担任を務める「フリーランスティーチャー」となる。これまで公立・私立合わせて延べ11校で講師を務める。NPO法人「Growmate」理事としてマーシャル諸島で私設図書館建設にも携わる。近著に『マンガでわかる!小学校の学級経営 クラスにわくわくがあふれるアイデア60』(明治図書)
(写真:田中氏提供)
(文:編集チーム 佐藤ちひろ、注記のない写真はiStock)
制作:東洋経済education × ICT編集チーム
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら