ジャガー・Fタイプクーペに乗ってみた! 市販スポーツカーを50年ぶりに一新
上級モデルと比べたら少々見劣りするスペックだが、エントリー・モデルとはいえ最大450Nmの大トルクを持つだけに、一般道を走っている分には不足を感じない。アクセルを踏み込んだ瞬間の加速感は特筆するほどではないが、エンジン回転数を高めていったときの伸びやかな加速感がスポーツカーらしさを強調している。高回転域になると、排気をバイパスして派手なエグゾーストノートを奏でるのはやり過ぎ感があるが、あえてドラマティックな展開を重視した演出だろう。「クイックシフト」トランスミッションと呼ばれるZF製8ATがエンジンの美味しいところをしっかり拾ってくれることもあって、力不足を感じるシーンはない。
シフトをSモードに入れると、より高回転域までエンジン回転数を高めてスポーティな走行に対応する。ステアリング・ホイールの背後にあるパドルシフトを使って積極的に操ってみたくなる。アルミ製ダブルウィッシュボーン式のサスペンションは路面をしっかり捉えている印象で、ダイレクトな操作感をもたらすのと同時に、乗り心地も悪くない。上級モデルの「S」には車体の動きやロールピッチを検知してアジャストするアダプティブダンピングが備わるが、今回試乗したノーマルのシャシーでも合格点を与えられる。
シャキッとした走りっぷり
しかも、先んじたコンバーチブルと比べて、クーペではねじり剛性で80%向上しているということもあって、クーペのほうがよりスポーツカーらしいシャキッとした走りっぷりだ。Fタイプ・クーペに乗って、あらためてジャガーがスポーツカー・メーカーであると感じた。50年余ぶりにその分野に復帰したことを宣言するためにも、充分な実力をアピールできたといえる。
最近のジャガー・ブランドの変化について、ジャガー本社でグローバルブランド・マネージャーを務めるアンナ・ギャラガー氏に訊いた。資本が不安定だった時期を乗り越えて、タタ傘下に入って以降にどんな変化があったのだろうか?
「新たな投資を行っており、異なる市場へと積極的に打って出るための基板を整えつつあります。新しいプラットフォームやパワートレインを得たことも含めて、ジャガーが本来あるべき姿、つまりスポーツカー・ブランドであることをしっかり主張できる体制が整っています。ジャガーには伝統を重んじる"ブリティッシュ・ラグジュアリー"というイメージがあり、"本物のスポーツカー"というイメージもあります。どちらかを強調するのではなく、そのバランスが重要と考えています」
デザインではどう表現するのだろうか? 「X-C17」のインテリアを担当したサンディ・ボーイズ氏は、「運転席をコックピット風に仕立て、スポーティな演出をすると同時に、オーセンティックな素材を使い、仕上げを綿密に行うことでテイラードな印象を作り上げています。素材には豪華で高級なものばかりではなく、最新で技術的な素材も使っています。その上で、プレミアム感を高めた仕上げにしています。具体的には、最高級のセミアニリン・レザーにステッチを施し、ハイテックな部品や素材を組み合わせるといった具合です。そうしたコンビネーションがジャガーの重要な要素なのです」
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