奈良線はおおむね木津川の東側を南に走り、本来は京都府最南端の駅、木津駅を終点とする(なので奈良県に入らない奈良線、なのだ)。が、それではあまりに不便なので、関西本線(大和路線)に乗り入れて奈良駅まで向かっている。
この奈良線の看板列車は“みやこ路快速”である。みやこ路、つまり2つの古都を相互に結ぶ快速列車。京都―奈良間の所要時間は約45分だ。これが長いか短いか。東京だったら45分の通勤時間などざらにある。だから2つの古都は以外に近いといっていい。
では、ライバルの近鉄京都線ではどうか。東京方面から奈良を訪れる人は、だいたい京都駅から近鉄京都線に乗り換えるという。京都駅の新幹線の改札口を出るとすぐ目の前に近鉄の乗り場があるから乗り換えが便利だというのもあるだろう。近鉄には特急があるから、というのも理由になりそうだ。
近鉄奈良駅は有名観光地に近い
全席指定で特急料金が必要だが、近鉄特急に乗れば京都―近鉄奈良間は約35分。奈良線のみやこ路快速に対して10分のアドバンテージがある。その上、近鉄奈良駅はJRの奈良駅に比べて奈良の中心地に近い。東大寺や奈良公園といった名所旧跡を巡る旅をするならば、近鉄奈良駅のほうが便利なのだ。
ただ、こうした事情だけをもって、近鉄京都線がJR奈良線より圧倒的に有利かというとそうではない。京都駅を発する近鉄特急はすべてが近鉄奈良駅に行くわけではなく、橿原神宮前ゆきの列車も多い。となると、奈良市内が目的地だったら大和西大寺駅で乗り換えねばならぬ。それは少々不便である。
それに、近鉄奈良駅が奈良の中心市街地に近いといってもその差は微々たるものだ。それほど胸を張って「近鉄が上なんだ」というほどのことはない。近鉄京都線とJR奈良線、その差はほとんどないのである。
とはいえ、実際に地元に住んでいる人に話を聞いてみると、近鉄優位は揺るがない。むろん、JRのほうが便利だという人もそれなりにいるだろうが、奈良県においては近鉄の存在感は圧倒的だ。それはなぜなのか。
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