大手タクシーが「車窓広告」に本腰を入れる理由 国内初、プロジェクター使い窓ガラスに投影

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コロナ禍後、タクシー利用が激減し、タクシー各社の窮状は深まっている。2020年度(2020年4月~2021年3月)の東京23区と武蔵野市、三鷹市(武三地区)の輸送回数は約1.1億回。これは2019年度(2019年4月~2020年3月)比で8000万回弱、4割以上減少した。

これら複数の要因が重なり、大和自動車交通の2021年3月期は35億円の営業赤字に陥った。運転資金の確保のため、2021年3月期末の長期借入金は112億円と、コロナ前の2019年3月期比で約70億円増えており、前島会長は「借金をしっかり返していくためにも、Canvasのような新しい収益源はとても重要だ」と話す。

都内でしか広告効果はない?

車内広告の場合、タクシー会社が受け取る広告収入は1台当たり月1000円。これに対し、車内広告と同じ6%程度をタクシー会社が受け取ると仮定すると、車窓広告の収入は1台あたり月約1万2000円になる。

都内を走る車窓広告付きタクシー(記者撮影)

東京23区を中心とする武三地区のタクシー1台当たりの月間売上高(コロナ前)は約145万円、利益率を考慮すると営業利益は1.7万円程度だとみられる。広告収入が追加費用なしで入る収入であることを勘案すると、車窓広告収入は無視できない収益源だ。

ただ、車窓広告には課題もある。1週間で300万人の目にとまるのは、あくまで人通りの多い都内だけ。そもそも人口の少ない地方部では、これだけの広告効果を見込めない。さらに、車窓広告装置を搭載したタクシーは今のところ100台にすぎず、S.RIDEに加盟するタクシー(1万台強)の100分の1以下の台数にとどまっている。

タクシー配車アプリS.RIDEに加盟するタクシー会社のジャパンタクシー(トヨタが販売するスライドドア式のタクシー向け車種)すべてに搭載する予定だが、設置用のガラスの形状などからこの車種以外には現状搭載できないため、搭載範囲が限られてしまうなど課題もある。

日本初の試みである車窓広告は、タクシー会社の経営を支える新たな柱となるのだろうか。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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