豪雨から身を守るには「雨水の行方」を知るべきだ 降った雨はどのようにして川の水になるのか
どの程度が浸透・吸収されるかは、土壌・地質の個性(隙間や粒子の大きさなど)や、直前の晴雨の状況などによって大きく変動しますが、晴天が続いた後の雨であれば、1時間に50~100㎜の規模の豪雨であっても、大半が浸透・吸収されると思われます。
それでも、吸収力の低い部分に降った雨や裸地に降った雨の水は、集まり、地面を流下する流れ(表面流)となります。雨の時間が長くなれば浸透度も低くなり、表面流出の量は増大します。そして、流下する小さな流れは集まり、渓流・小川となります。
地中にしみ込んだ水もまた浅い地中を重力で移動して、再び湧き出す流れも加わって、水量を増して小河川となります。繰り返す合流を受けて上流、中流、下流と水量を増して、海へと注がれます。集水された雨水の一部あるいは、かなりの部分が流水となり、増水しながら流下し、海に排出されるということです。
以上が、集水、流水、増水、排水というプロセスです。ただ、この説明は事態をあまりに単純化し過ぎています。実際には、この過程には保水、遊水、氾濫という複雑な事情も関わってきます。
豊かな森は保水力があるから安全?
ある面積の地域(流域)から流れ出す雨水の量は、その地域に降った雨水の量よりも少ないのが普通です。蒸発したり、何かに付着したり、生物に吸収されたり、地面深く浸透したりします。
それだけでなく、池や田んぼに溜まってしまうものや、浅い地中を移動して表面の流れとは別のゆっくりとした動きをする水もあります。川の流水となる水の量を削減させるさまざまな経路が存在するのです。
一時的にせよ、流水と区別されるこれらすべての水の量を保水と呼んでもいいのですが、森や田畑や池が一時流下を留める量(これも実際には測定困難ですが)だけを、まずは保水と考えておくとわかりやすいかもしれません。
同じ豪雨が降っても、流域生態系ごとに、流出の量は異なります。地形、土質、植生、田畑や池の分布など、保水の量を決める状況は、流域生態系ごとに異なっているのですから当然のことです。
例えば、同じ量の雨が降ったとして、まとまった緑のない流域と、豊かな森のある流域とでは、流出量はどのように異なると思いますか? 豊かな緑のある流域では、まとまった緑のないものと比べて、流出の増加はゆるやかになります。
さらには、流出量のピークも低く、雨の後の減少も緩やかになります。一定期間に流出する雨の水の総量も小さくなります。理由は、豊かな緑は大きな保水力があるからです。
専門的な話になりますが、「緑のダム論」についても少し触れておきましょう。「大きな森は、大きな保水力を示す」ということは疑いようのない事実です。大きな森は大量の植物を抱え、深い土壌を形成して、雨の水を遮断(植物に雨水がついて蒸発することを遮断といいます)し、地下浸透させて、保水します。
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