ユニデンの株主総会「参加は役員のみ」の仰天事情 前会長と対立、アクティビストの存在も背景に

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ユニデンが株主総会で株主を拒むもう1つの理由は、アクティビスト(物言う株主)をはじめとする投資ファンドの存在だ。

ユニデンは不動産や現金を潤沢に保有。PBR(株価純資産倍率)も6月15日時点で0.5倍、時価総額は160億円程度と割安で、アクティビストから狙われる典型的な企業だ。これまで日本のヴァレックス・パートナーズやアメリカのコーンウォール・キャピタル・マネジメント、香港のリム・アドバイザーズといった投資ファンドがユニデン株を取得。ユニデン株の約25%を握っている。

株主提案に株主がなびくことを恐れた

このうち、アクティビストのリムは、アメリカにおける不正会計を見逃した監査役の解任などを求めて株主提案をしている。これに議決権助言会社のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)が賛成の意思表示をしており、総会を開けば他のファンドや株主から質問が出る可能性が高い。

「ユニデン株主の3分の2は浮動票と言われている。総会で質疑応答を実施すれば、そうした株主が株主提案になびいてしまい可決されてしまう。そうした事態を恐れているのではないか」(前出証券会社幹部)というのだ。

これに対しユニデン側は、自己株式消却のほか、決算発表後に配当を50円から100円にする増配を突如発表するなど、株価を引き上げて会社提案の議案に対する賛成票を集めることに必死になっている。

こうした疑問について、ユニデンは「担当者多忙のため、取材をお受けすることができません。株主総会を当社役員のみで開催する理由などにつきましては、当社定時株主総会招集ご通知に記載しているとおりです」と答えるのみだ。

株主総会までにユニデンが残された時間はあとわずか。うるさい株主の攻勢をかわしたいという思いだけで株主の総会出席を拒否し続ければ、市場の信頼も失いかねない。

田島 靖久 東洋経済 記者

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たじま やすひさ / Yasuhisa Tajima

週刊東洋経済副編集長。大学卒業後、放送局に入社。記者として事件取材を担当後、出版社に入社。経済誌で流通、商社、銀行、不動産などを担当する傍ら特集制作に携わる。2020年11月に東洋経済新報社に入社、週刊東洋経済副編集長、報道部長を経て23年4月から現職。

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