はびこる不誠実対応「学校での事故」の悲痛な実態 「真実を知りたい」と願う当事者たちの闘い

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学校側から何のアクションもないまま、時が過ぎた。娘は卒業式に出ることもなく、やがて夏がきた。夏休み前の7月下旬、卒業アルバムを手にして、教諭らがやってきた。その場で、松田さんは訴えたという。

「もしご自分が、大切なお子さんを私と同じ状況で亡くされたら、『心肺停止で亡くなりました』って言われて『はい、そうですか』って納得できますか。もしご自分だったら、どう学校から対応されたいですか。何度でも話し合って共に歩まないと、先生たちもお気持ちが前に進めないんじゃないでしょうか」

教諭らは涙を流し、松田さんの話に耳を傾けていたという。

翌月、ようやく話し合いの場が設けられ、松田さんは疑問に感じていたことを問うた。学校とのやりとりで、自動体外式除細動器(AED)の場所を事前に把握していなかったこと、心肺蘇生の講習会を3年以上も行っていなかったことなどがわかった。松田さんは伶那さんの死を無駄にしないよう、学校と改善に向けて歩んでいく気持ちだった。

それでも、何があったのかを詳しく知りたいとの思いは消えない。解剖を行わなかったため、死因がわからないままだったからだ。

「第三者委員会を立ち上げてもらえば、真実がわかるに違いない」。そんな思いから、弁護士を訪ね歩く。しかし、行く先々で「死因が特定できないから闘うのは難しい」と返された。

文部科学省の事故対応事例に報告なしで掲載

それから数年後、松田さんを驚愕させる出来事が起きた。文部科学省が2015年に発表した「学校事故対応に関する調査研究調査報告書」の中に、伶那さんの事例が掲載されていたのだ。学校からは何も報告もないままなのに、である。

中身を見ると、事故後の調査検証の欄に「小規模な学校だったため、検証委員会を設置しなかった」とあった。さらに、事故対応を通じて得られた教訓・課題の欄には次のように記されていた。

「子どもの日常の健康状態の把握が一番大切である。親も学校も既往症の把握が非常に大切である。入学後健康診断はあるが、過去の既往についてはわかりにくい」

次ページまるで既往症を隠していたかのような報告書
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