人生の折り返し、47歳「中年の危機」の向き合い方 映画「47歳人生のステータス」が描く悲哀と再生

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ホワイト監督も「テレビやSNSを通じて、大金持ちの生活を見ることが、どれだけ満ち足りない感覚や羨望感を生み出していることか。自分たちの周りの誰もが宝くじに当たっているかのように見える。そして、私たちの資本主義文化の中で、このような極端なライフスタイルへの欲望が、いかに個人的には苦痛で、全体的には破壊的なものかということを描きたかった」と語る。

主人公のブラッドを演じるのはベン・スティラー。ミッドライフ・クライシスによって、これまでの人生に対する自信や自己肯定感を失ってしまった47歳の中年男の心の旅路を、抑えた演技で見事に体現している。どこか人生をあきらめたような彼のたたずまいがブラッドという役柄に真実味を与え、シンプルな物語でありながらも観客に深い印象を残す。

スティラーが脚本を読んだ際、本作が描き出している繊細な親子関係に感銘を受け、オファーを快諾したという ©2017 Amazon Content Services LLC and Kimmel Distribution LLC

ホワイト監督も「この映画のキャスティングは、さじ加減の難しいものだった。この作品はコメディー要素があり、思慮に富んでいて、周到に練られている。私たちは、ユーモアの感覚がありながらも、当然の選択とはならない俳優陣を探そうと思っていた。

もし、皆がコメディーの期待を抱く俳優陣をキャスティングすることでコメディーの方向へと向きすぎてしまったら、思い描いた映画を作ることはできないと感じていた。

ベンは、笑える普通の人みたいな感じで、都会的な野心のようなものを体現する、強烈で、正確なコメディー俳優なので、ブラッドの役柄にうってつけだと考えた」と、キャスティングの理由を明かす。

人々が感じる疎外感や不安を痛切に描き出す

一方のスティラーも脚本を読んだ際に、本作が描き出している繊細な親子関係に感銘を受け、オファーを快諾したという。スティラーもインタビューで「マイクとは昔からの友人だが、今まで一緒に働いたことがなかった。オファーを受けた決定的な要因は、脚本を読んですぐにこの作品が気に入ったということと、そしてなんといってもマイクが優れたコメディー作家であるということ。彼がこの作品を作るなら特別な作品になることは明らかだ」と語っている。

本作はブラッドの心の声とも言うべきナレーションをもとに描き出される。「大学時代、僕は世界を愛し、世界も僕を愛していた。その愛が冷めたのはいつだ?」「彼らをつないでいるのは友情ではなく一定の成功だ。リストに載っていない僕は存在すらしていないのだ」などなど、主人公が発するシニカルな心の声が、現代社会に生きる人々がなんとなく感じている疎外感や不安を痛切に描き出している。そんな痛切な思いにとらわれた主人公が心の旅路で見つけ出すものは何なのか、思わずわが身を振り返ってしまいそうだ。

壬生 智裕 映画ライター

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みぶ ともひろ / Tomohiro Mibu

福岡県生まれ、東京育ちの映画ライター。映像制作会社で映画、Vシネマ、CMなどの撮影現場に従事したのち、フリーランスの映画ライターに転向。近年は年間400本以上のイベント、インタビュー取材などに駆け回る毎日で、とくに国内映画祭、映画館などがライフワーク。ライターのほかに編集者としても活動しており、映画祭パンフレット、3D撮影現場のヒアリング本、フィルムアーカイブなどの書籍も手がける。

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