社会情勢が大変化「高輪ゲートウェイ駅」の未来

鉄道利用者減の逆風下で進む駅周辺の再開発

現状、高輪ゲートウェイ駅利用客のほとんどが、西へ300mほど歩いた、本来の高輪地区の住民または通勤通学・用務客であろう。そこでは都営地下鉄浅草線・京急本線の泉岳寺駅が1968年以来、高輪地区の玄関口として50年以上機能している。JR山手線・京浜東北線の駅が近くに開業しても、「JRだけ」で向かうほうが都合がよい客以外は、さほどの流出はないと思われる。また、従来は品川駅を利用していた層の高輪ゲートウェイ駅への転移もあるだろう。

むしろ今後、品川開発プロジェクトの完成によって、泉岳寺駅の利用客数アップも見込まれる。都では市街地再開発計画と連携して、2024年度までにホームの拡幅など大規模なリニューアルを行う予定である。

高輪地区の象徴である泉岳寺(筆者撮影)

現状、JR各線と京急との乗り換えは品川、都営浅草線とは田町―三田間のほうが便利である。それは今後も変わらないから、高輪ゲートウェイ―泉岳寺間の乗り換え客が大きく増えるとは、あまり考えられない。ただ、再開発地区を挟んで、両駅間のスムーズな連絡は必要だろう。

計画図面の上では自動車交通とは分離された「歩行者ネットワーク」が構築されるが、これは評価できる。だが、えてして「雨のときは傘を差さないと濡れる」とか「案内がわかりにくい」といった、細かい点に気配りが行き届いていない前例はあちこちに見られる。両駅間の歩行者ルートが、歩く道としては理想的なものになるよう期待したい。

高輪築堤発見の影響は?

「高輪築堤」は明治の初め、新橋―横浜間の鉄道が建設された際、海岸べりに築かれて線路を通した築堤の貴重な遺構であり、保存を求める声が上がるのはよくわかる。江戸時代の城跡に匹敵するものであろう。

開発予定地で発掘された「高輪築堤」(編集部撮影)

発掘された状態のまま、恒久的に残されるのが理想であるが、品川開発プロジェクトは、築堤が出土した位置も事業範囲、つまりは高層ビルの建設範囲に含んでいる。JR東日本は遺構の一部を現地保存、もしくは移転保存する意向を示し、再開発ビルの一部の規模縮小を伴う設計変更を行う予定であるが、大きな負担増となる。

そもそも、新型コロナウイルス感染症流行による新幹線を中心とする鉄道利用客数の大幅な減少に伴い、鉄道会社各社は前例のない減収に見舞われている。名古屋鉄道のように都心部の再開発事業の見直しを図る事業者も現れた。遺構保存や計画変更のための経費、そして事業規模の縮小となると、JR東日本の経営としては痛手以外の何物でもなかろう。しかし、先人の技術的な遺産を後世に伝えることを優先した姿勢は、高く評価したい。

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