渡邉光一郎・第一生命社長--株式会社化はゴールでなくスタート、海外でも欧米系生保との差別化は可能
こういう理解のもとに、それぞれの投資家の理解のもとに成長戦略を描いていかなければ、単純な増資などということはあり得ませんから、資本調達の多様化というものを駆使してやっていきたいと思います。
■相互会社か株式会社かではなく、顧客価値が重要
--契約者が株主になったわけですが、単純にいえば、第一生命という会社が今後も成長していくと考えれば、今すぐ株を売らなくてもいいわけですね。契約者の立場からすれば、将来の約束はきっちり守ってほしい、でも配当は欲しい・・・。
ですから、相互会社がよいのか株式会社がよいのか、契約者配当なのか、株主配当なのか、こういう議論がすぐ二極対立的な議論になるんです。
実はこういう分配論ではなくて、我々はこれを弁証法だと言っている。弁証法的に解決するためには、資本政策に基づく成長戦略を打ち出し、これを着実に実行して企業価値を高めることによって、この矛盾を解決していく。これが経営がやるべきことだと思っています。
当社の創立者は、このことを予言したように、驚くべきことを書き残してくれています。1902年に創業し、30年経ったとき、当社はもう業界第2位に上り詰めており、その当時、相互会社は絶大な評価を受けていました。にもかかわらず、創業者は明治大学の講堂で講演し、「相互会社がよいのか、株式会社がよいのかという議論は、木造の家がよいのか石造造りの家がよいのか、という議論と同じである」と言ったといいます。木造の家にも石造りの家にも、よい家も悪い家もある。要するにそれはどちらでもよい話で、お客様にとってよい家を提供することこそが、われわれがやるべきことなのだと。
現在においても全く同じことが言えると思います。われわれは将来の発展のために、従来の木造よりも、石造りのほうが展開しやすいし、拡大しやすいと判断したので、これからは石造りにしたわけですね。
繰り返しになりますが、契約者のご理解を得て、しっかりした成長戦略を見せながら品質も保証する、というような形での経営を行い、契約者のご理解をベースにした成長がなければ、株主の負託に応えられるわけがない。世の中の成功している上場企業はみんなそうです。