五輪開会式の演出案流出で見落としがちな本質 組織委が文春に抗議も最大の問題は内部にある

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そしてコンプライアンスの視点では、派閥に分かれて権力闘争をしているような状況は、不正が起きやすいリスクのいちばん悪いパターンだとされています。そういった場合は組織全体や顧客価値を毀損させてでも相手にダメージを与えるという行動が組織の中で起きるからです。

組織のトップにはそのようなことが起きないようにする責任があります。決定プロセスや任命プロセス、評価プロセスを透明にして、組織の中での理不尽を減らすことがトップには求められる。五輪の組織委の場合、下のほうで権力争いが起きていて、営業秘密が流出しているのは、トップの問題なのです。

そのような状況になってしまった責任は、本来ついこの間までトップだった森喜朗前会長にありそうだと考えるのが普通です。一方、理不尽なところですが、もしこの先、同様な形で秘密情報が拡散されていった場合の責任は橋本聖子現会長がとらなければならない。それが組織運営のルールです。

納税者を巻き込むゴタゴタはもう勘弁だ

納税者として心配することは、こういったことが起きるたびに演出案が変更になって、そのたびに費用がかさむことです。もちろんそういった変更に対して政治力を使って「無料で仕事しろ」みたいな話は五輪という性格上聞きたくもありません。

東京五輪はお金をかけない五輪として7000億円の予算で大丈夫だと国民は聞いていたのですが、もうそこからどれくらい増えたのでしょうか。自分で調べる気にもなりません。こういったことを避けるためにも、もっとメディアも国民も早く言わなければならなかったのでしょう。

「ゴタゴタはもう一刻も早く抑え込んでください。秘密流出による価値毀損とコスト増は会長の責任なんですよ」と。

鈴木 貴博 経済評論家、百年コンサルティング代表

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すずき たかひろ / Takahiro Suzuki

東京大学工学部物理工学科卒。ボストンコンサルティンググループ、ネットイヤーグループ(東証マザーズ上場)を経て2003年に独立。人材企業やIT企業の戦略コンサルティングの傍ら、経済評論家として活躍。人工知能が経済に与える影響についての論客としても知られる。著書に日本経済予言の書 2020年代、不安な未来の読み解き方』(PHP)、『仕事消滅 AIの時代を生き抜くために、いま私たちにできること』(講談社)、『戦略思考トレーニングシリーズ』(日経文庫)などがある。BS朝日『モノシリスト』準レギュラーなどテレビ出演も多い。オスカープロモーション所属。

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