五輪開会式の演出案流出で見落としがちな本質 組織委が文春に抗議も最大の問題は内部にある
次に教わることは、組織運営には不正行為がつきものだということです。そして組織のトップはそれを心得たうえで、そのような状況リスクを認識してリスクを減らす努力をしなければいけない。
たとえば過剰な営業ノルマを課すことは、コンプライアンス上よくない行為が起きやすい状況を組織のトップが作っていると教わります。年賀はがきの販売ノルマを厳しくすれば金券ショップに安い年賀はがきが出回りますし、保険のノルマを厳しくすれば高齢者をだます社員が出てくる。その際に、悪いのはそのような制度を作ったトップだと教わるわけです。
この不正行為が起きやすい状況にはたくさんのパターンが整理されています。そのリストでは、たとえば「幹部社員の退職が決まっている」みたいなときはいちばんの要注意のタイミングだとされています。それまで愛社精神をもって組織に尽くしてきたあの人が「まさか営業秘密をもって他社に転職するとは思わなかった」というケースが、転職というタイミングでは起きがちです。
幹部の退職前後は機密情報に注意
退職の理由に多少の恨みがあれば特にそうなりやすい。だからどんな人格者の幹部でも退職前後は機密情報へのアクセスは制限しなければならないと教わります。
五輪の組織委の運営について、われわれ外部からはわからなくても、今回の一連の騒動で第三者でも容易に理解できることがひとつあります。どうやら五輪の組織委内で何らかの権力闘争が起きているようです。
そもそも考えてみればすぐにわかりますが、東京五輪の開会式の演出責任者というポジションには高い経済価値があります。その肩書ひとつで、さまざまな仕事や役職が舞いこんでくるかもしれない。出演者も同じです。その決定プロセスが不透明に運用されていたとしたらどうでしょう。必ず組織の内部でマウンティングが起きます。
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