五輪開会式の演出案流出で見落としがちな本質 組織委が文春に抗議も最大の問題は内部にある
ただこの問題に先立って『週刊文春』の3月18日発売号でも出演者を侮辱するような企画案があった事実がすっぱ抜かれて、責任者の佐々木宏氏が辞任するという事案が起きました。メディアには取材源の秘匿の原則がありますから流出経路は特定されませんが、五輪の組織委から繰り返し文春に秘密情報が流出するという現象が起きています。
それでこの状況が仮に今後も続いて、本格的に五輪開会式の経済価値が下がってしまった場合、誰が責任をとらなくてはいけないかというと、組織コンプライアンスの原則に基づけば橋本聖子会長であり、組織委が責任をとらなければならなくなります。公共的な組織ですからもし賠償が発生すれば最終的には国民の税金が使われることになります。当人からみれば理不尽な話なのですが、それがコンプライアンスのルールというものなのです。
これからお話しするのはずいぶん昔、私がアメリカ公認会計士試験の合格者に義務付けられたコンプライアンス研修で学んだ話です。わかりやすいように日本流にアレンジしてお話しします。
あなたが組織のトップで、仮に性善説で組織をマネジメントしていたとします。会社だという設定にしましょう。あらすじは以下の通りです。
「倉庫があってその倉庫に品薄なゲーム機の在庫が山積みされていたとします。それをどうも社員が持ち出してフリマアプリで売っているらしい。それであなたは『そんなことはしていけない』と社員に訴えかけるのですが、ある日出社してみるとこんどは倉庫のゲーム機はすべてなくなっていた」――。
大損害です。このようなことが起きた場合、誰がいちばん悪いのか?
組織のトップに最終責任がある
私はこのようなケースは組織のトップである社長がいちばん悪いと教えられました。
理由は組織のトップには株主から預かった資本を守る責任があるからです。誰でも入ることができる倉庫に価値があるものがあってそれが盗まれた。まずそれがアウトで、一度それが起きたら鍵を厳重にしたり警備員を配置したりしなければならない。そのように何かが盗まれないためにあらゆる努力をする義務が組織のトップにはある。ここが出発点です。
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